幼馴染み
1
『――――廉。俺はお前のことが……』
――――あの後。
静寂さだけを残していたはずの空間には場違いな程のチャイムの音色が鳴り響いて、その先の言葉を完全に聞き損ねた俺。
『え……ごめん。蒼、もう一回…』
気を取り直して蒼に二回目をお願いしたが、蒼は珍しくも一瞬目を見開いただけで首を横に振った。
『いや……何でもない。授業も始まるし、行こうか』
その言葉の意味を証明するように蒼の両腕が俺から離れて行く。
それはどことなく今の俺の気持ちを表しているようで――――…蒼が俺から離れていくことが、何故か無性に寂しく感じた。
教室には戻ったけど、当然のように授業内容なんて覚えてない。
太田とのことだって、最早俺にとってはどうでもいいことで。
勿論、蒼や彼方に知られたのは凄く嫌だし、嫌われるんじゃないかって思ったら悲しくなったけど二人は何を言うでもなく俺と接してくれるから、俺も今まで通りでいられるんじゃないか……って。
それよりも、聞き取れなかった蒼の言葉の方が気になって仕方ない――――…。
どうしてこんなに気になるか、なんて愚問だ。
蒼はどう思っているか分からないけど、俺は蒼のことなら何でも知っていたい。だから、あーやって中途半端に話を切り上げられるのは、きっと隠し事されてるみたいで嫌なんだ。
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