幼馴染み
11
「――――ムカツク」
「え?」
小声すぎて聞き取れなかったので問い返してみたが、喋る気はすでにないのか幾ら待っても返答はなく。
「蒼……?」
「……何でもない。これからは太田に気を付けろよ」
「うん。ごめんな」
一度だけ頭を撫でられた。
俺はいい加減、蒼から離れようと手を離したが蒼は一向に俺を抱き締めたまま離れる気配がない。
「蒼?俺、もう落ち着いたし大丈夫だけど……」
おずおずと告げると、腰に回っていた蒼の手が漸く離れた。
「そうか。じゃ、教室戻る?」
「んー。何か、授業受ける気分じゃなくなったー。蒼、カラオケ行かない?」
「そんなんで試験大丈夫か?」
「大丈夫!なんてったって俺には蒼がいるし!」
カラオケ、と決めたらテンションが上がってきた俺はつい今しがた起こった出来事もすっかり忘れて受かれ気分だ。
「……単純」
そう言って、蒼が笑った。
「それが俺の長所だし!」
威張って返すと蒼の瞳が細められ、優しい笑顔が視界に映り込んだ。
久々に見たからか――――…俺の心臓が、ドキンと波打った。
「そうだな」
蒼……?
いつもと様子が違う蒼に調子が狂う。
否定されるかと思ったが、予想に反して穏やかな表情で俺を見つめる蒼の瞳が優しすぎて、やけに印象的に映った。
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