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幼馴染み
9

「お前に教える義理はねぇけど?……いいから、さっさと廉を離せ」

蒼の言葉に従って太田先輩は俺の両手を離して解放してくれた。だから俺は急いで蒼の元へ向かうために走ろうとした。

「待てよ」

不意に先輩に右手首を捕らえられて足止めを食らう。

「離せよ……!」

折角、自由になる!と思った矢先、殺がれた解放感。俺は意地になって腕を振った。

「!!」

それでもグッと力任せに引っ張られると、先輩の胸に顔を埋める結果に陥る。


俺の耳許に先輩の唇が寄せられて、

「諦めないから。……またな、廉」

それだけ囁き落として、太田先輩は今度こそ俺の手を離してくれた。


俺は一目散に蒼の元へと駆けて行く。


勢い余って蒼の胸に突っ込むが、しっかりと抱き留めてくれた。


だが数秒経って、頭上にいる蒼が声を押し殺して笑っていた。――――僅かに震える蒼の身体が、そのことを教えてくれる。

「蒼!!」

俺が叫ぶと。

「悪い」

と、全く悪びれている様子も無く笑いは止まらないらしい。


俺達がジャレている間に、横を擦り抜けて太田先輩は屋上から姿を消していた。

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