幼馴染み
8
太田先輩も相手の存在に気付いたようで、中途半端に唇を解放して背後を振り返った。
「蒼!」
唇が離れると、俺は開口一番に蒼の名前を叫んだ。
「湯河……」
「廉を離してやって貰えます?……ソイツ、俺のなんで」
「お前の?」
離す云々ではなく、後者の蒼の発言が太田先輩は気になったようだ。
「そう。廉の首の、裏側。見てないんですか?俺のって、シルシ。ちゃんとあるんですよ?」
それだけで太田先輩は何を意味してるのか理解したみたいで、無理に俺を動かして指示された箇所に目を凝らす。
「馬鹿な……!廉は、ノーマルだろ!」
「廉、じゃねぇよ。お前が廉を軽々しく名前で呼ぶな」
敵対心剥き出しの蒼。
俺の中の違和感を蒼が拭ってくれる。言わなくても分かってくれている。……先輩に名前で呼ばれることを毛嫌いしている俺を。
「あー……何だ、湯河。学校一の色男が本気なんだ?」
先輩が楽しそうに笑った。
面白いモノでも見付けたような、そんな顔をして。
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