幼馴染み
7
「先輩……!!」
「答えろよ、――――廉」
ゾクッ、と身震いした。
今は俺の知っている優しい太田先輩じゃないような気がした。
「嫌いじゃ、ないです……」
その答えを聞いて先輩は満足したのか、口許を緩ませた。
「じゃ、いいよな」
何が「いい」のか分からなかった俺は首を傾ける。
「そんな顔して、そんな目で俺を見るお前が悪い」
太田先輩は立て続けに言葉を吐いて、二度目に顔を寄せてきた。さっきの今で流石の俺もその意味を理解したので、素早く顔を逸らした。
しかし、拒否出来たと思えたのはその時だけで俺を追ってきた先輩の唇に強引に奪われる。
「……ンッ!」
今度は、触れるだけのキスじゃない。
強引に舌を捻じ込もうとしてきたので、俺は必死で歯を食い縛った。だが先輩も引かない。無理に歯列を抉じ開けて、舌を入れてくる。
「ンん……ッ!」
気持ち悪すぎて泣きたくなってきた。
どうして俺がこんな目に遭わないといけないんだ!
しかも、かつては憧れていた先輩に――――……。
「廉!!」
三度目。名前を呼ばれた。
先輩の顔を見たくなくて必死で目を瞑っていたが、その声を耳にして俺は驚愕に瞳を開けた。さっきも聞こえた声。
やっぱり幻聴なんかじゃなかった。
俺がこの声を聞き間違えるはずがない。
そこには、一番助けて欲しくて、でも一番見られたくなかった相手がいた――――。
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