幼馴染み
6
「廉!!」
どこかで、聞き覚えのある声が俺を呼んでいる。
……でも、ここにはいない。びっくりしすぎて、とうとう幻聴まで聞こえるようになったか?俺。
「廉……?」
――――俺を呼んでいるのは、この声の主じゃない。
我に返ると超至近距離の太田先輩が俺の顔を覗き込んでいた。
あぁ……キスした相手に硬直されたら、そりゃ不安にもなるか。
俺はその気の抜けた一瞬の隙をついて太田先輩の胸を押して身体を離した。
「ごめんなさい!俺、先輩とは付き合えません!」
「それは好きな人がいるから?それとも、俺が男だから……?」
「好きな人はいないし、男とか女とか関係ないです。そりゃ、最初はかなりびっくりしましたけど。でも俺、そんな風に先輩のこと見たことないし……」
「じゃあ、そんな風に俺のこと見てよ。意識したら……何かは違わない?俺のこと嫌いじゃないだろ?」
再度、先輩が近寄ってきて俺は逃げるように後退していく。
すると運悪く際に追い込まれたみたいで、背中にフェンスが当たった。
「ゲームオーバー、かな?」
「………ッ!」
「なぁ。俺のこと、嫌いじゃないだろ?」
ガシャン!!
と、フェンスが軋みを上げた。
先輩が俺の両手首を掴んで腕を持ち上げると、フェンスに押し付けたからだ。
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