幼馴染み
4
「あれ?もしかして、まだ聞いてないのか?」
「……何を……?」
「だから……」
「だから?」
「……いや。これ以上は俺が言うことじゃないし、後は自分で考えろよ」
「えーっ?!」
最も大事そうな部分だけを見事にはぐらかされて、場違いな程大絶叫してしまった。
「廉、ここ教室」
「――――あ。……ごめん…」
彼方に指摘を受けた途端、俺は我に返り慌てて口許を自分の掌で覆い隠す。
それに伴う周囲の反応は、室内を見なくたってビシビシ伝わってくる。クラスメイト達の視線がかなり痛いことを、俺は肌でしっかりと感じ取っていた。
「ま、あれだ。頑張れよ」
――――だから、何を?
不思議に思い眉を寄せてみても、彼方は小さく口許を緩めるだけだった。
解答がない所か、余計に謎を深めて状況を悪化させるなら、いっそのこと最初からヒントなんて与えなければ良かったのに……。と思ったって、もう遅い。
だって、俺は不可抗力ながらも聞いてしまったわけだし、一度頭の中に入った情報を忘れることなんて、そう簡単に出来ることじゃないから。
ましてやそれが、蒼のこととなれば尚更だ。
……蒼のことだからこそ、俺は忘れられないのかな……。
マイペースを地で行く彼方は結局、俺に疑問だけを押し付けて、一人でさっさとトイレに行ってしまった。
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