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幼馴染み
12

すると今まで頭を深々と垂らしていた安藤が少しだけ顔を上げて、彼方の方へ振り返る。


正面にいる俺からじゃ安藤がどんな表情をしているかまでは分からなかったけど、尻を蹴られて笑っていられる程安藤もお人好しじゃないはずだ。

「痛いだろ桃井!俺を蹴っていいのは廉だけだ!」

「………」

安藤の台詞に、無言の彼方と俺。


――――…うん。
痛いの後は、聞かなかったことにしよう。


彼方に言うだけ言ったら満足したのか、安藤はまたすぐに頭を下げてきた。


こうなってしまったら、もう手の施しようがない……。


安藤と知り合ってからそんなに月日は経過していないけど、ある程度話したりしてたら大まかな性格なんてのは俺でも分かる訳で。

「分かった。行くから、もう止めろって」

正直、気は全く進まないものの先に根負けしたのは俺だ。

「マジで!ありがとう廉!」

俺が承諾した途端に勢いよく立ち上がった安藤は嬉しさを身体全体で表しガバッと抱き着いてきた。

「ちょっ……っ…」

余りにも突然のことで逃げることも出来ず、まして抱き締め返すことなんても出来るはずもなく、自由な両腕は行き場を失いただただ対応に困っていたら、これまた突然に安藤の身体が離れていった。

「何するんだっ……湯河!」

「廉から離れろ」

漸く口を開いたかと思えば明らかに言葉少なく不機嫌なオーラを身に纏った蒼の姿がそこにあった。

「痛い痛い!はーなーせー!」

蒼はまるで子猫を扱うみたいに安藤の首根っこを掴んで引っ張っている。


確かに漫画では何度か見たことのある現象だけど……まさか実際に行われている所を目にするとは思わなかった。

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