幼馴染み
10
「頼む廉!!」
憂鬱な試験からもやっと解放されたある日、いつも通り短い休憩時間を使って隣のクラスからやって来た安藤が、いきなり俺達の目の前で土下座した。
ちなみに俺はまだ、安藤のことを『広海』と名前で呼べないでいる。そのことで何度か安藤には指摘を受けたけど、その度に謝っている俺。
だって、なぁ。
名前で呼ぶの、実は結構苦手だったりするし。
――――まぁ、こんな話はどうでもいいか。
突然の安藤の土下座にびっくりした俺と、
どこか愉し気な彼方と、
興味なさそうな蒼。
「ちょ、安藤……顔上げろよ!」
安藤の土下座を最初に止めるよう助言したのは、俺だ。
だって、どうするべきか考えあぐねた俺が意見を求めても、二人はほっとけと言わんばかりに傍観していたから。
「いや!一緒に行く返事が聞けない内は頭は上げられない!頼む廉!うんと言ってくれ!」
「てか何で俺?!」
「廉しかいないんだっ!」
まるで熱烈な告白紛いなことを言っている安藤だが、その内容は全く違う。
「あー、もう!頭上げないと聞いてやらないぞ!!」
蒼と彼方は仕方ないにしても、いい加減、クラスメイトの興味津々な視線も痛い。
「頭上げたらうんと言ってくれるか?!」
と、必死な安藤には非常に申し訳ないが即答出来なかった。
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