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X7 〜ペケナナ〜
いきなりチーム結成!?








南棟裏の落書きだらけになっている外壁、通称『掲示板』





様々な落書きの中に目立つのは人の名前と車名。巷ではコレを『挑戦状』と呼び、その上から赤いペンキで×印しで塗りつぶされると『墓標』と呼んだ。





街で有名な『黒い死神』と呼ばれるR32GT-Rに挑戦し敗れた後、二度とステアリングを握らなくなった者の墓標と…





本来、この『挑戦状』を書き込まないと『黒い32GT-R』に相手にされないのがセオリーたったが────






『挑戦状なき挑戦者』




彼は通りがかった所を標的にされ、即興で始まったバトルは意外にも接戦を極めた。

突然現れた彼に対する評価は千差万別。

暗黙のルールを破った者は街の秩序を乱すと非難する者。

逆にその走りの次元の高さから新たな英雄と絶賛する者の両者がほぼ同数で割れていた。






その乗り手の姿を見た者は少なく、その後起きた大事故の印象が強すぎて顔を忘れてしまったという者も少なくない。






その為、その乗り手を特定する事が酷く困難で、この辺りじゃ珍しいAE111レビンの話題は『死神』を知っている者たちの間で最も気になる存在となっていた。






今日も『掲示板』へ足を運ぶ者は少なくない。名前も車名も書き込まれていないのに『死神』から勝負を仕掛けられたたレビン乗り。






『墓標』にも名前が載らないと言うことは、彼の心がまだ折れていないからなのか?それとも始めから『死神』の気まぐれだったのか……




地の色も分からない程の落書きで埋め尽くされた『掲示板』。夕日で照らされてきた頃、何者かによって7つの×印しだけが新たに書き足されていた。



その印しに何の意味があるのかは、今はまだ誰にも分からない。




「……そろそろ頃合いか」




──
───




「ちょっとアンタ達!!」


放課後、帰り支度をして帰ろうとしていた所を突然アスカに呼び止められた。


「えっ……僕?」


シンジは自分を指差す。


「そうよ。それとアンタ」


そう言ってアスカはレイを指差す。


「何?」


「ちょっと付き合って!?」


そう言われてアスカに連れられて来たのは南棟の『掲示板』。

そこにはクラスの委員長『堀木ヒカリ』の姿も。なんだか物凄くシンジたちに対して申し訳なさそうな顔をしている。


「回りくどいのは嫌いだから単刀直入に言うわ」


「………」


何を言われるのかドキドキしながら構えるシンジ。

無表情のレイ


「私たち4人でチームを作るわよ!?」


「はぁ?」


あまりにも唐突で拍子抜けした。


「はぁ?って何よ!?…ねぇヒカリ、私変な事言った?」


日本語は完璧だが、未だに日本の風習なんかに慣れてないアスカはヒカリに尋ねる。


「ゴメンね碇君、綾波さん。止めとこうって言っても、アスカ聞かなくって」


驚いた。あまりにも予想外すぎる出来事にシンジは口をぽかんと開け、一種の思考停止状態に陥った。


「チームって……何の?」


「何って走り屋のチームに決まってるじゃない」


ますます困惑。そもそも、そういった事は同じ好き者同士が仲良くなり、さらに交流を深める為であったり、何かしらの目標に到達するための団結の為だったりするのではないか?


「他の連中もみーんなチーム作って和気あいあいとやってるんだけど、ただの仲良しチームっていうか…志が低すぎてつまんないのよね。だから、私たちで作るのよ!少数精鋭の最速集団を!!」


「はぁ…」


諦めた様に肩を落とす委員長。それで察しはついた。こうなったらもう止まらないんだろうと。


「……どうして僕なの?」


「ウチの学年で余ってるのがアンタら2人だけだったからよ」


仮にも最速を名乗ろうとするチームが、こんな寄せ集めでいいのだろうか?しかも、2人って言ったということは、綾波レイも間違いなくこの中に入っている事になる。


「私、帰る」


やっぱり


「ちょっと待って綾波さん!!」


意外にも止めに行ったのはヒカリだった。何か必死に説得している様子だ。それでもレイはなかなか頷かない。


「あの子はヒカリに任せて、アンタはいいわね」


「えっ?」


「別に断る理由もないでしょ。こーんな美女に囲まれてるわけだし、それにアンタ他のチームに入ったら間違いなくパシリよ」


「どうして僕がどこかのチームに入るって決められてんだよ」


「アンタってホントに馬鹿ね。明日になったらみーんなアンタの事をこぞって誘いに来るわよ。で、アンタは断りきれずにどこかのチームに入る。でもアンタは天性のイジメられっ子のオーラが出てるから、どのチームだろうと3日も経てばパシリ確定よ?それでいいの?嫌でしょ。だから私のチームに入りなさい。決して悪いようにはしないから」


「…惣流はそうじゃないって言えるのかよ」


「ええ、言えるわよ」


即答だった。


「どうして?」


「アンタはアイツと一戦交えてるからよ。」


解答は意味不明。それで何が保証されたのだろうか?


「アスカ、綾波さんOKだって」


「そう、じゃあもうアンタだけね」


「あ、綾波……本当にいいの?」


レイは小さな声で呟いた


「……別にかまわないわ」


「えっ?何で?」


「………」


レイはシンジから目線を逸らした。


「んもう…入るのか入らないのかどっちか早く決めなさいよね!!アンタそれでも男なの?」


「えっと…その」


「面白いね。入ったらどうだい?碇シンジ君」


シンジが決めかねていると、そこにカヲルが現れた。


「誰よアンタ」


「おっと失礼。僕の名前は渚カヲル。よろしく」


ブンブンとアスカとカヲルは握手を交わす。


「…ヒカリ、こんな奴この学校に居た?」


「アスカ知らないの?カヲル先輩ってスッゴい有名なんだよ。しかも、一年留年してて私たちと同じクラスなのよ」


ヒカリも若干興奮気味だ。でもアスカはそれをフンッと跳ね除けた。


「あぁ、入学式以降に一度もきょうしにつ来ない不登校の奴ルックスだけの男なんて興味ないから」


「じゃあ、そのルックスだけの男もこのチームに入れてもらえないかな?」


「なんでよ」


「物事には誰か一人詳しい奴がいた方がいいだろ。それにシンジ君と一緒なら面白そうだしね」


シンジの肩に手を回し、グッと引き寄せる


「カヲル先輩がチームに?」


「何驚いてんのよヒカリ」


「私もよく分からないんだけどね、カヲル先輩ってこの学校で一番運転が上手なんだって。留年した原因も車のせいだって…」


「ふ〜ん、まっいいわ。特別に入れてあげる」


「ありがとう。これでいつでも一緒に居られるねシンジ君」


笑顔のカヲル。固まるシンジ。聞き流したアスカ。赤くなるヒカリ。無表情のレイ。


それぞれの思いを胸に、後に白煙高校史上最強になるチームは結成された。


碇シンジの返事を聞かぬままに



「ちょっと待ってよ。僕はまだ何にも…」


「うるっさいわね〜アンタはもう強制よ!!」


「そんな〜」

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あきゅろす。
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