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Märchen
先見の明


「久しぶりじゃの、ハティ」

部屋でお酒を傾けている時に、彼はやってきた。
彼と会う時はいつも、私の人生の転機だった。今回も、きっとそれなのだろう。

目の前のダンブルドアに私も言葉を返した。

「ハリーは今年で11歳になるのじゃ。ホグワーツに入学することになるじゃろう。」

そして彼が動き出すならば今年だと告げ、ダンブルドアは帰って行った。

日焼けし、角も表紙もあの頃とは変わってしまった日記を握りしめる。
ダンブルドアの言葉はいつも私の中で重たく残る。

あの時もそうだった。

"君は、それでいいのかね?"

出来ることならばと何度思ったことか
何度願ったことか

後悔していないと言えば嘘になる。
けれど、今思い直しても、あの頃の私では彼を止めることなど到底無理な話だった。
魔法の力添えを持たない私の言葉などに彼が耳を傾け改心するなどと…

それだというのに、今尚やり直せたらと未練がましく考えてしまうのだ
昨日見た夢のように、彼が私に呪文を放つ前に、もし私がと…

悔やんだ所で、過去は変わらない。
彼が犯した罪も、私の罪も変わらないのだ。
生き残った少年の両親も、他にももうこの世にはいない沢山の人々の命も、もう戻らない。

グラスに残ったウィスキーを飲み込めば、アルコールが体に回った。
これでもう余分なことは考えずに眠れる。

「トム…」

彼の事だけを考え、彼に会いたいと願いながら、今日も眠るのだ。






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あきゅろす。
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