短編です。
絶滅危惧種と嫁
俺ぁ津巴里学園のトップに立つべく生まれた、生まれながらのツッパリ野郎だ!
今までもこれからもなぁ!!
そして俺は学園の上の奴等をぶっ飛ばす日々を送っている!
かぁさん!俺ぁあんたから生まれて良かったぜっ!!
「ケッ!屁でもねぇや。他にやる奴ぁいねぇーのかぁ!!」
三年共を踏みつけて雄たけびを上げる俺に傍観していた奴が手を上げる。
「あぁ?てめぇがヤンのかぁ?あぁ!?」
「ち、違います。ここには鬼ヶ島新次郎ってトップが…」
「な、なにっ!?どこだっ!どこに居る!」
屋上を指差すそいつ。
し、しまったぁあっ!不良と言えば屋上じゃねぇかっ!!
そこを見落とすなんざ不良の風上にもおけねぇ!!!
よしっ!ちょっくらいってくっか!!
「ありがとなっ!よっしゃあぁぁああっ!!待ってやがれ鬼ヶ島ぁぁあっ!!」
地面を抉るかの如く地を蹴る俺に生徒や先公が道を開けてくれる。
何だ、良い奴等じゃねーか!
俺ならよけねぇぞ?
兎に角まぁ、屋上へ続く扉を前に深呼吸。
きっと死闘が繰り広げられる!鬼ヶ島なんて名前なんだ!鬼みてぇな奴にチゲぇねぇ!
待っていろ!鬼ヶ島っ!!
ズバァァァアンッッツ!!
「おぉにがぁしまぁぁあっ!!」
勢いよく扉を蹴り飛ばして叫ぶと、飛んで行った扉が何かに当たって倒れた。
あと、人も倒れてやがる。
「お、おい?大丈夫か?」
近づいて覗き込むと鼻血を出して気絶しているらしい。
まさか鬼ヶ島にやられたのかっ!?
顔を観察してみると、もっこりした頭がやたら目立つ奴で、あれだ。テレビとかで見た今は絶滅したリーゼントってやつじゃねぇか!?
まさか絶滅じゃなくて絶滅危惧種だったとは…
しかしこいつ、絶滅危惧種が使っていただろう黒い革張りのマスクに噂に聞くマダオがつけるであろうグラサン。
それに指出し革手袋、バタフライナイフ装備と言う今じゃ見られない格好だ。
ちなみにブレザー指定の高校で長ラン今じゃ特攻服みてぇなもんだな。を、着ている。
謎すぎるこのマダオ。
「おい、おいマダオ。大丈夫か?」
頬をぺしぺしと叩くと唸り声を上げる。
お、目ぇ開けやがったな。
「…はっ!?な、なにっ?ひ、膝枕だとっ!?」
自分の状況を確認したマダオが飛び起きて真っ赤になりならがら指差す。俺を。
「あぁ、鼻血出てたからな?血が出たら心臓より高くないとダメなんだってかぁさん言ってたぜ?」
「そ、そうか。すまない。だが膝枕は嫁にしてもらうものだからな、旦那にしかしたらダメだ!」
「あ?だったらおめぇが旦那になりゃ良いだろうが!あぁ?」
真っ赤になるマダオに首を捻るとまた鼻血を垂らした。
折角ズラしてたマスクも血まみれだ。
「お前、どう言う事か分かってんのか!?結婚するんだぞ!?お前、おまっ!苗字が鬼ヶ島になるんだって分かってんのか!あぁん!?」
「おに、がしま…鬼ヶ島っ!?」
まさかっ!こいつが鬼ヶ島だとっ!?じゃあ誰に伸ばされたんだよ!!?
「そんな事よりてめぇっ!俺が旦那でいいんだなっ!!?」
「あ?俺が旦那だろーが!」
「俺は女じゃねぇ!」
「そんなリーゼントで頭固めてグラサンで顔隠した奴に旦那なんざ務まるかよっ!!!」
「じゃあおろしゃいいんだなっ!!」
ポケットから何やらペットボトルを出して頭からかぶる鬼ヶ島。
「なっ!てめぇ!そりゃなっちゃんじゃねぇか!!もったいねぇ!もったいないオバケが出るぞ!!つらかせやっ!!」
「なにしやがるっ!」
ドキンッッ!!!?
な、な、何だこいつっ!
ちょーイケメンじゃネェか!?
だが顔から滴るなっちゃんがっ…!
ちゅうっ!
「っ…!?」
なっちゃんもったいねー!!
なっちゃんをある程度舐め取り、俺は鬼ヶ島に掴みかかる。
「なっちゃんはなぁっ!なっちゃんは頭からかぶるためにあんじゃねーぇんだよっ!!」
「…け…」
「あぁ?」
「結婚してくれっ!!」
「はぁっ!?」
「キスはなぁ!キスは結婚しねぇとしちゃならねぇんだぞ!お前責任取りやがれ!!」
な、こいつ、初めてなのかっ!?
ドキドキしやがるっ!何なんだっ!
責任…取ってやろうじゃねぇか!
「俺に出来ねぇこたねーんだよっ!」
「お前苗字が鬼ヶ島になんだぞ!」
「鬼ヶ島龍太郎。いいじゃねぇか!受けてたってやるぜ!!」
「龍太郎…」
「…新次郎」
「「結婚すっか!」」
晴れて俺達は夫婦になりました。
あれ?何か忘れてね?
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