短編です。
コンビニパンのヤンキー2
「てめぇー!!何で棚ごとひっくり返すんだー!」
「勝手にひっくり返ったんですー」
店長の鉄拳を受けて涙目な俺も相変わらず減らず口を叩く。
癖だからしゃーねー
「あー…次から俺が見てますから。すいません店長」
「もう池田。お前こいつ何とかしろ」
「池田さんにたよんなよ!!店長も注意しろよな!」
「お前が悪いんだろクソガキ!」
「あたっ!」
負けず嫌いな俺は店長に屈しません。
こんど入り口にスカしっペしたろ。
「今田くんも謝りなさい」
「…すまそ」
「腹立つなお前」
笑いながら言っても説得力ねーぞ店長。
帰りになってまたパンをぶちまけた俺は店長に巴投げをされて羽交い締めにされた。
「今田くんも少し注意しなきゃね」
「だって棚が俺に喧嘩売ってくるんすよ」
言い訳がましいが、事実だ!
足の小指は結構痛い。
「はいはい、マサも来ましたから帰りましょうか」
「雪兄ちゃん!シネー!」
「ぐはぁ!チ●コがもげた〜!!」
「…やめなさい」
流石に露骨過ぎたか!
白い目で見てくる。
でもかっこいいからいっか。
ぅあ!なんつー思考回路!!
「何一人で青くなったり赤くなったりしてんだよ。雪兄ちゃん置いてくぞ」
「はっ!待て待て!雅也っ!」
「何だよ」
「池田さんの事名前で呼んだ方が良いのかな?」
「…そうだなぁ。晴れて恋人になったんだし呼んだ方が良いと思うよ?」
俺は頭を抱えた。
夏樹さん?夏樹。なっちゃん、夏。
ヤバい。どうしたらいい!?
「あんた本当可愛いよね」
「ガキの癖に生意気なっ!」
頭をぺしりと叩いて池田さんの車に駆け寄る。
俺のために設置された灰皿。
俺のために買った巨大スピーカー。
ウーハーが凄いのだ。
「俺幸せ過ぎて死ぬ」
「え!?ダメだよ死んじゃ!!」
「例えっすよ」
必死な顔をする池田さんに苦笑する。
そう言えば池田さんもあれ以来俺を雪と呼んでいない。
どうしよう…
「どうしたの?具合悪い?」
「いっ!?いや!何でもにゃい!」
「ははっ!そっか。じゃあ早く乗って?」
雅也を抱えて助手席に座り、そわそわする。
今呼んだら不自然か?
不自然だよな…
「マジへたれ…」
「黙れ雅也」
「ん?」
「あー…何でもねー」
顔に熱が集まって窓に顔を向ける。
膝に乗ってる雅也が笑っていたが知った事か…
タイミングなんだよタイミング!!
「そう言えば今日のご飯は何がいいかな?」
「あ…えと。何か食べたい」
「うーん。今田くん」
「じゃあそれで…はぁっ!?」
「…そろそろ頂きたいなぁ…」
なななな何言い出すんだこの人!?
寧ろこんなキャラか!??
え…つか喰われるのか俺?
え…女役って事だよな?
「ぇえぇえぇっ!!!?、」
「ど、どうしたの?やっぱり嫌?」
「嫌、ではないけど…」
俯くと寝てしまった雅也の頭が顎に当たった。
ちょ、え?
「…ダメ?」
首を傾げて俺を見つめる池田さんは申し訳なさそうに眉をハの字に垂らした。
うわぁぁあ…ヤバい可愛い。
初めて見た。
「ダメじゃない…し」
「でもまだ早いかなぁ。」
「え?」
「覚悟出来たら言ってね?それまで待つからさ」
「…おう」
ヤバいヤバい。恥ずかしい。
何だよこの乙女思考!!
あんた優し過ぎんだよ…
よしっ!俺はやるぞ!!
第一歩だよな。
「あああ、あのっ!!俺夏樹さんの事好きだからな!」
「…っ!今田くん!」
「てめっ!俺が頑張ったんだから今田はやめろっ!!」
「あ、ごめんね雪くん?」
「ん」
ヤバい。顔面が熱くて仕方ない。
いつもの倍心臓が煩い。
早死にしちまう…
けどこれも良いかなと隣を見ると鼻歌まで歌う夏樹さん。
あぁ、俺はこの人に恋するために生まれたみたいだ。
だってこんなに毎日幸せだ。
全部が、この人の全てが俺の幸せだ。
うぉぉおぉぉっ!!!
やっぱ俺乙女みてぇじゃんっ!!?
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