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桜庭学園の王道は少し暴走する。
ついにバレた。




誰かの声でゆっくり覚醒する。
車に乗ると寝てしまうのは俺の癖でもある。
目を開けて声の主を見ると東がもう着くからとニッと笑った。

「すまんな、東」

「別に、よく寝てたな」

「そうか?」

「ん」

着くから準備しろとのアナウンスで上に上げてある荷物に目配せをする。

他が降りてからでいいかと体を椅子にもたれかけて欠伸をする。

「何か眠そうな龍騎見たの初めてだ」

「あぁ、お前起きるの遅いからな」

「龍騎が早すぎるんだっつの」

「早起きしないとお前の飯作れないだろ?」

「…っ!」

笑って答えると顔を真っ赤にする。
あんまりいじめ過ぎかと冗談だと笑っておいた。

到着したバスで、ある程度降りたのを確認して荷物を下ろすと東が手伝ってくれた。
多少の身長差が憎いな…

バスを降りた所で明日夢が自分達は反対側だと何故か坂上を置いて行ってしまった。

「ん?先輩は行かなくて良いんですか?」

「俺はこっち」

「あ、そうなんすか」

頭をポンと叩かれて顔を寄せられる。

「お前『掃除屋』だろ」

確認とは違う確信した様な声に苦笑いを浮かべる。
小声で言ってくれたのはありがたい。

「そうだっつったらどうするよぉ?」

ちょっと昔に戻った気分で耳元で告げると自分でもびっくりするぐらい低い声が出た。
昔はもう少し高かった気がする。

「…っ…やっぱな。ま、おとなしくなっちゃって。あの時手ェ抜いただろオラ」

青筋を浮かべる先輩に申し訳ないと苦笑しながら謝ると溜息を吐いて次は本気でやろうと誘われたので人が居ない所で、と答えた。

「東、何してんだ?」

「別に…」

後ろからシャツを握りしめる東に坂上が納得した様に頷いた。

「頑張れ青少年」

「うっさい…」

「…?」

2人で主語のない会話をして、俺には一切分からない。
最近多い気がする。

「おーい!切符買ってき…って何があったの」

メンチ切る東とそれに対してニヤニヤする坂上。
そして、困り顔の俺。
俺にも分からないんだけど…

「まぁいい、おい!東。いつまでやってる!早くしないと次来るぞ」

会長に頭を叩かれて不機嫌そうに手を離す東。
俺は切符を貰って金を渡す。
東も同じ様に金を渡していた。

坂上にどこで降りるのかと聞かれて答えると俺は二つ前で降りるぜと爽やかに笑って見せた。

5人で座席に座り、前に居る宮間がたまに振り返ったりしてる。
高校生みたいだなと微笑ましく思って、自分もか。と苦笑した。

降りる駅だと荷物を抱え直した坂上が振り返って見た事ない笑顔で俺を見た。

「ありがとな、掃除屋」

頷き返した後にはっと周りを見たが、終点が近い事もあってあまり人が居なかった。

「ちゃんと分かってやってんだっつの、じゃあな」

「はい、では夏休み明けに」

おう、と後ろ手に手を振って去って行く坂上に年上の格好良さみたいのを感じた。

「ところで早咲」

「…ん?」

行儀が悪いなどと宮間に言っていた会長が身を乗り出して俺を見る。

「お前、掃除屋ってホントか?」

「「「……」」」

あまりに会長が自然に居たため忘れていた。
会長に昔していた事なんて話した事はない。

「あぁ…昔、な」

「そう、か」

知らなかったのは俺だけか、と呟いて座り直してしまった会長の憂鬱オーラがビシビシ伝わってくる。

どうしたものかと考えてたら宮間が会長に絡み出した。

「あーも!会長!考えたら分かるでしょっ!りゅうは過去を知られたくないし、東は同室者!俺は幼馴染で手伝ってた事もあるし、坂上はさっきばれたの!!だから知ってるのは東と俺と佐伯と坂上と会長だけ!ね?」

「あ、あと新聞部」

「はぁ?」

「あいつが喋ったせいで東にばれた」

元はと言えばあいつが原因だ。
嫌いではないが。

「そうだな、お陰で掃除屋に会えた」

「探してた系?」

「中学の時に助けられた」

「やっぱり俺だけ他人だ…」

「あぁもう!」

「ぅわっ!何しやがるっ!?」

暗いオーラを放出させる会長に宮間が襲いかかってもちゃもちゃしてる。

擽られているのか電車内だと言うのに笑い声がこだまする。
まぁ、今回は見逃すかと思ったが、長い。
会長の声は息も絶え絶えで、時折鼻をすする音が聞こえる程だ。

「こらみや!いい加減に…」

「ど、どうしよう…りゅう」

立ち上がって会長を見ると、俺でも動揺する程、エロかった。






「もうお前嫌いだ。寄るな来るな消えろっ!」

「いやいや、会長がコチョコチョ苦手なのがいけないんすよー?」

「知らん!そんな事された事ないんだ!」

「マジ?」

俺のシャツを握りしめて後ろに隠れる会長に、宮間が会長を覗き込もうと前をチョロチョロ動き回る。

「みや、やめろ。進めん」

駅に着いてからこの調子で半泣きの会長を庇いながら歩いていると道行く人がキャーキャー騒ぐ。

まぁ、顔がいいのが揃っているからな。

「早く案内してくれ。みや」

「そうだ!さっさと行け!俺に構うな」

「へいへーい」

「龍騎、茶飲むか?」

一瞬消えていた東にペットボトルを渡されて礼を言ってからキャップを開ける。
一応皆にもあるのか何故か宮間のだけコーンポタージュだった。
この暑い中律儀にそれを飲む宮間に偉いなと思った。







[*逃げる][説教#]

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