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「早く彼女つくりなよ。」
「あの子可愛いよね!」
「すごくいい子なんだよ?」



そんなの全部。







生まれてからの腐れ縁。
家がお隣さんというありがちな幼馴染で、小中高と一緒に通い、青春時代を共に過ごした戦友。

そんな彼を異性として意識しだしたのがいつかなんて、覚えていないけど。


関わってきたこの20年近く、彼には女の影がほとんどみえなかった。
高校の時に何かあったらしいけど、行きたい大学を決めていた私は、噂が気になりつつも、受験という戦争のなかを生き抜くのに必死だった。

今年お互い志望校に合格し違う大学に通っている今でも、週1で会っている。

そしてそんな彼の口癖は

彼女が欲しい

だった。

「自分でも努力してるつもりなのに!なぜ!なぜ!彼女ができないんだ!!」


・・・知らんがな。

あなたの目の前にいる女の子は、今すぐにでも貴方の胸に飛び込めるんだよ?


なんて意気地無しの私が言えるわけがないので、何人か友達を紹介した。

本当は 私 を紹介したかったんだけど。
この『幼馴染』の20年は私には長すぎた。



桜の季節が過ぎ、週1の逢瀬も20回を越えた、夏のある日。

あいつが厭にニコニコニコニコしていた。
嫌な予感がよぎったけど、一応聞いてみる。

「どうしたの?そんなに嬉しそうな顔して。」

「え?聞きたい?聞きたい?」

「いや、別に。」

「そんな!聞いてよぅ!つれないなぁ!」

何キャラだよ、なんて心でツッコミをいれつつ、続きを促した。

あいつはコホン、とわざとらしい咳払いを一つし、満面の笑みで



「彼女ができましたぁ!!」



と高らかに叫んだ。万歳付きで。

「ありがとな、本当、お前のおかげだ!!」

幸せそうに礼を述べる彼。
相手は、私が紹介した友達だった。
私とは正反対の、とても可愛らしい娘だった。
そして、彼の高校時代の想い人だった。らしい。


一瞬言葉に詰まりそうになったけど、なんとかのどに力をいれて良かったね、と呟いた。



今、私の頬の筋肉は上がってる?
涙は出ていない?


本当、なんでこんな鈍い男を好きになったんだろう。



自分がほとほと嫌になる。今までで最大の自己嫌悪が思考を飲み込む。


でも。

私がたった今 不幸 だったとしても。

あの娘を紹介したのは私。

勧めたのも私。

何より、彼の隣に『女』としているために行動しなかったのは

誰でもない、私なんだ。


結局は自分が招いた出来事。

ケリをつけるのは私なんだ。






だから、神様。

いらっしゃるなら、ただひとつ、お願いがあります。





あなたが好きなの

本当はあなたに、抱きしめてほしいの




彼に言えなかった、この気持ちを伝えるための勇気を

彼への恋心を忘れる勇気に変えて、私に与えて下さい。













だから、神様



私に勇気








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