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かさぶたが無くなる前に
窓から風が優しく流れてきて私の体を包む。さっきまでのあなたの声みたい。
言い方もぶっきらぼうなのに。なのに、受話器から耳に流れる声は絶対に私を否定しない。
なのに。
明日はどうやら雨らしい。天気予報でもいわれていたけど、風に乗って私の鼻をくすぐる水分を含んだ空気の匂いと、最近ついた事故での傷の疼きが、これからの天気を物語っている。
でも雨の日なら
「相合い傘でもする?」
なんて、あなたなら簡単に言ってのけて、私に笑顔をくれるのかな。
いつでも優しかったあなたの声を拒んだのは私。
大きすぎるプライドと極度の照れ。
原因はきっと、これ。
少し切なく笑った後、何もなかったように、また優しい声を降らしてくれる。
そんなあなたがずっと前から、そして今も大好きなんだよ。
ねぇ、だから、電話越しで同じ言葉ばかり聞かせないで。
もう何回留守電再生のボタンを押したかわからないよ。
淋しい
淋しい
ねぇ、なんで私なんか助けたの?
なんで、私も一緒にいかせてくれなかったの?
今日も空から降ってくる雫に、答えが返ってこないことをわかりながら質問を繰り返す。
私にできることは、今はこれしかないから。
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