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続く青


朝は嫌いだった。本当に嫌いだった。

精神的な回復を「夜明け」と比喩した表現をよく耳にしたが、私にとって夜明けは怠い一日の始まりでしかなかった。


そう。

貴方が青をくれるまでは。









俗にいう、県外のメル友。
何かと縁がありメールでの交友が始まった。
ノリで電話番号なんか交換しちゃったり。
写メ交換しちゃったり。
まだ直接会ったことはないけど。
…自分がこんな俗なことするなんて思ってもみなかったけど、今の自分も嫌いではない。

彼とは深い仲にはならず、ただ冗談を言い合うフランクな関係。
異性の友人 という位置がすごく居心地よかった。


そして今回も軽い冗談が1つ飛び出す。
朝に弱すぎる私たちの『早く起きた方が相手に電話をかける』というゲーム。


実行されないと思っていた私は、また来る『明日』に少し煩わしさを感じながら眠りに就いた。


そして目を覚ますと、残念ながら朝。
あぁ、始まってしまった私の朝。少し落胆。

目覚まし代わりのアラームを消そうと携帯を手に取った瞬間だった。

よく聴くと、アラーム音には設定していない音楽が携帯から流れだしていたのだ。

慌てて液晶画面を覗くと、いつも メール送信者 の欄にある名前が 通話発信者 の欄にある。
無意識に上方にある応答ボタンを押す指と、もしもしと掠れた声を漏らす口。


「おはよう。起きてた?」

朝独特の低く掠れた声がくすぐったい。
向こうも起きたところなのかな。

「ちょうど、今さっき起きたところ…です。」

やばい、上ずる。

「はは、俺も。でも先に電話したから俺の勝ちだな。」

「え?」

「言ってだろ、昨日。モーニングコールゲームとか、いやー洒落てるよな。」

にやり、とした顔が浮かぶような口調が私の頭を少しずつ覚ましていく。

「あのゲーム本当だったんだ?!」

「おい、俺様は嘘は言わねーぞ?」

すみません、なんて笑いながら謝る。

別にいいけど、とおどけて言いながら彼が言葉を繋げた。

「あ…、おい!外見ろ、外!すっげーいい天気!!やっべーテンション上がる!」

朝から元気だなぁとまだ少し眠たい頭で部屋のカーテンを開けると、目の前に真っ青な景色が広がっていた。


それは言葉のまま、雲一つない、美しい空だった。


私は、朝に広がる空を美しいと思ったことがあるか、と自問自答してみる。
もちろん答えはNO。


この空が、生まれた土地も住んでいる場所も、もちろん今いる場所も違う私たちに、平等に太陽の光と爽やかな風を運んでいるんだ。

そう。私は感動したのだ。
今までの私だったら考えられないな、なんて自嘲気味に小さく笑うと、向こうにも聞こえてたらしく、反応があった。

「おい、笑うなよ。」

「あ、ごめん。今の、今までの自分に笑ったの。」

今までにない、清々しい気分だった。

「そう?ならいいけど。なに、何かあったの?」

「うん。ちょっと、頑張ってみようかな、と。」

「そうか。それはよかった。」

「うん。ありがとうね。またきれいな空見つけたら教えてよ。」

「おう、任せろ!上向いて歩くだけだかんな。楽勝楽勝!」

「はは。やっぱり…思考回路おもしろいよ。」

「そうか?普通だろ。」


ううん、普通じゃない。

やっぱり 好きだ という言葉を打ち消して一緒に笑う。

想いを伝えるよりも、一緒に笑う朝が大事だから。






おはよう












私の朝を虹色にする、貴方だけが使える魔法の呪文





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あきゅろす。
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