main
僕が彼女を抱きしめるとき
ヒトって忘れてく生き物だから
だから、君のことだって簡単に忘れられるんだよ?
そう僕に言い放った彼女は、その強気な態度と裏腹に、自身の大きな瞳に今にも零れ落ちそうなほど涙を蓄えていた。
その美しさにまた、僕は吸い込まれるんだ。
僕はこの、真っ直ぐな瞳に惚れた。
そして僕は何度も、わざと彼女を傷付けた。
初めは、いつも気持ちが読めない彼女の反応をみて、自分が安心したかったから。
でも彼女の涙は格別で
ビー玉の様に澄んだ瞳に蓄えられた雫に
そっと口付ける度にゾクゾクとした。
それに気付いてからは、彼女の涙を飲みたいという欲求を満たすためにあの女を使った。
僕がズルズルと関係を切らなかったから続いているだけの関係。
それでもすごく役立った。
でも、もうやめるよ。
だって、僕は気付いたんだ。
僕のこの欲求が満たされても、心が満たされることがないってことに。
逆に、雫を飲むほどに彼女は笑わなくなったんだ。
僕が唯一幸せだと感じられるものは、彼女の笑顔と鈴のような笑い声だったのに。
欲求が満たされることが、必ずしも幸せに繋がるわけじゃない。
こんな簡単なことになんで気付かなかったんだろう。
僕が彼女を抱きしめるとき
それは
僕が彼女と幸せになりたいとき
それは
僕が 彼女に愛の懺悔をするとき
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!