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まずは私から名乗った。

「ナナコです。これからよろしくね」
「ボクはビビ。あそこにはおしばいを見に来たんだ」
「わたくしは…」女の子はちょっとためらってから名乗った。

「わたくしはガーネットです」
「ガーネット?それって、アレクサンドリアの…」

ビビが遠慮がちに言うと、ガーネットは決意をこめた表情で頷く。

「そうです、わたくしはガーネット・ティル・アレクサンドロス十七世。アレクサンドリアの王女です」
「えっ!ホントにお姫さまだったの!?」
「え?」
「いや、あの劇の役がお姫さまだから『姫さま』って呼ばれてるのかと思って…」

ガーネットは花の綻ぶような微笑みを浮かべた。

「ふふ、確かにわたくしの演じたコーネリアも姫君でしたよ。面白い偶然です」
「そうなんだ…。でも、お姫さまがどうしてあんなとこでおしばいをしてたの?」
「それ、ボクも知りたいな」

ビビも口を挟んだ。
ガーネットは、これまでの経緯を説明してくれた。
家出をする為に劇場艇に忍び込もうとし、ジタンたちに誘拐されることに自ら決めたこと。
その途中、スタイナーさんに追い詰められ、成り行きでコーネリア姫を演じたことを、「演劇には少し興味がありましたので、なかなか貴重な体験でした」と少し楽しそうに話して締めくくった。

「スゴいね、そんな度胸私にはないよ。ね、ところでアレクサンドリアってことは、ここはヨーロッパ辺りなの?」
「ヨーロッパ…?聞いたことがありませんが、それはどこの地名ですか?」
「うーん、ボクも知らないな」

その返答を聞いて私は愕然とした。
ヨーロッパを知らない?こんな私ですら知ってる、ヨーロッパを?そんなバカな…。
やっぱりここは、どこか変だ。頭がくらくらして来たが、私は質問を変えた。

「…待って。ここは何地方、何大陸?」
「多分、ザモ盆地の範囲だと思うけど…。それにここは、霧の大陸だよ」

何それ、全部聞いたことない…。
地球の大陸は全部見つかった後だ、霧の大陸なんてもの存在しないはず。それにビビの出した炎、あれは魔法にしか見えなかった。それに二人はあのヨーロッパを知らないと言った…。
全部有り得ないことばかり。でもこれらは現実に起こっている。
これらがうまく結び付くように考えると、どうなるだろう?
私は一つの結論に達した。
ここは地球じゃない、まったく別の世界なんだ。
親切に教えてくれたビビにお礼を言うのも忘れて、私は呆然と立ち尽くしていた。

「ナナコのおねえちゃん、ひょっとして外の大陸から来たの?」
「えっと、……そうだよ。どうやって来たかは分かんないけど」
「そっか、それでボクらの知らない土地の名前を知ってるんだね」

ビビは私の言葉を素直に受け止めたようだ。
でも間違ったことは言ってないよね…?この大陸じゃない場所から来たのは確かだから。
別の世界から来たなんて自分でも頭がおかしいとしか思えないこと、他人に話せるわけがない。確実にやばい人だと思われてしまう。
それに、ここが本当に地球がないと完全に言い切れるほどの確証を得たわけじゃないし…。
ビビには悪い気がするけど、そう思われるのが一番無難な線だった。

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あきゅろす。
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