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床が固い
いやに寝心地が悪くて目が覚めた。
何だか知らないが、明らかに床の上に寝ている感じだ。
まさか寝相が悪い余りにベッドから転げ落ちて……いや、私が使っているのは敷き布団なんだから有り得ないか。
まだ眠いけど、流石に体の節々が微妙に痛むくらいなので起きざるを得ず、私は目をこすりながら のろのろと立ち上がった。

「あれ」

どこだ、ここは。
待って、私の六畳間は家出したんですか…。
まず目に入るのが、今いる場所の奥行き。どう考えても広すぎる。
それに、周りにそびえる太い柱も、異様な空気を放っていた。でかい…デパートだってこんなのはないと思う。
値段はあまり分からないが、よく磨き上げられているところから見ると、高級なものだろう。
天井には豪華な造りのシャンデリアがぶら下がってロウソクの光を微かに揺らしているし、床は鏡みたいにぴかぴかの大理石だった。

(まるでお城みたい…)

息を呑んでもう一度部屋を見渡す。
結論からして、私の部屋でも家でもお店でもないことは確かだ。
じゃあ私不法侵入?いつの間に?
私は寝る前に何をしていたのかを思い出そうとした。
(確か昨日は、夕ご飯食べてテレビ見て、お風呂入って普通に寝たよね。それから、……それから?)

そこでぷっつりと記憶が途切れていた。
必死にあれこれ可能性のあることを挙げてみても、何となくしっくり来ない。
覚えていなかった。

(でも、これ制服だよね…多分学校には行ったんだ)

しかしいつの間に制服に着替えたんだろうか…。
少し自分が怖かったが、いつまでもこうしていても仕方がないと思い直して大理石の上を歩き出す。
まるでギリシアの神殿みたいな柱の間を通ってこれまた高そうなふかふかの赤いカーペットの上を歩く。
そうして部屋を出た先は、天井が恐ろしく高い吹き抜けだった。
あっけに取られて小走りに手摺に駆け寄り、右にある馬鹿でかい肖像画を眺める。
手に扇子を持った身分の高そうな誰かが悠然と微笑んでいる絵だ。
信じられない。
私は青くなって確信した。

ここ、本当にお城なんだ!

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あきゅろす。
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