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ネコとカラスと銀行強盗6
 そしてイグニスたちも、戦いに終止符を打つべく準備を整えていた。フライパンや鍋を抱えるエミリと、カレー用に購入した肉の袋を掲げるタカシ。そして二人をサポートするように立つ、イグニス。

 ギャアッ! カラスの声が響いた。

 「ほらほら、ご飯だぞー、取りに来いよー!」

 肉をちらつかせながら、じりじりとカラスの群れに近寄るタカシ。すると、数羽のカラスが羽をばたつかせたかと思うと、少年目がけて飛び立った。

 慌ててUターンし、逃げる。その後に続くイグニスとエミリ。

 ガアガア喚きながら、カラスたちは次々にエサへ向かって集まってくる。そう広くない空き地では、あっという間に追いつかれてしまうだろう。

 だが、そのためのフライパンだ。集まるカラスのくちばしから身を守る盾代わりに、エミリがそれらをかざし、タカシと自身を守る。ざぁっと黒い塊と化したカラスの群れが、頭上を回った。

 「カイザー!!」

 と、その時、イグニスが叫んだ。そして彼の声と同時に、塀の影から飛び出し、軽やかな身のこなしで木を駆け上がる白いネコ。ガラ空きになった巣から財布をくわえ取る!

 「よしっ、成功だ!!」

 「カイザー、こっちよ!」

 まっすぐ飼い主目指して走る白ネコにも、カラスの猛攻が降り注ぐ。―――が!

 「タカシ、それを投げるんだ!」

 「分かった!!」

 群れの真ん中を狙い、タカシの手から肉の塊が放たれる。パッと散った群れの隙をついて、三人と一匹は何とか空き地から脱出したのだった・・・・・・。



 「はぁー・・・・・・良かった、おさいふ取り戻せて。」

 「ああ、やっつけの作戦でも何とかなるもんだなあ。」

 エミリの家の玄関口に避難したタカシとイグニスが口々にこぼす。そんな二人を、エミリはにこにこと眺めた。

 「ありがとう、イグニスさん、タカシくん。お財布探すの、手伝ってくれて!」

 「はは、良いんだよ。困ってる人を助けるのが、オレの仕事だから。」

 「探し物ってGODの仕事なのー?」

 呑気に頭で手を組みながらタカシが言うと、どっと周りが笑った。けれど、すぐハッとして立ち上がると、イグニスの背中を押しながら、

 「ちょっとイグニス、のんびりしてる場合じゃないよ! 姉ちゃんにカレー作らなきゃ!!」

 「あっ、しまった!」

 ようやくイグニスも本来の目的を思い出したようで、エミリを振り向いてにこりと笑い、

 「それじゃ、オレたちはこれで。もう財布をカラスに取られないようにな?」

 「はい! ほんとにありがとう。・・・・・・あっ、タカシくん?」

 「え?」

 不意に呼び止められ、くるりと振り向いた彼の頬に、エミリがちゅっとキスをした。途端、沸騰したようにタカシの顔が真っ赤になる。

 「うわわわわわ! イイイグニス早く帰るよ!!」

 「あはは、分かった分かった!」

 「笑わないでよー!!!」

 おかしそうに笑うイグニスと、その背をぎゅうぎゅう押しながら騒ぐタカシ。二人の騒々しい背中を、エミリとカイザーが手を振って見送った。


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あきゅろす。
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