絡みつく罠、忍び寄る闇!5
轟音と共に砕け飛んだビルの破片が、スピーチュラのビームに当たって四散してゆく。
むちゃくちゃな防御ではあるが、これがブローの持ち味なのだ。
さらに追撃として、足元の瓦礫を抱え上げ投げつける。慌てて糸をたぐり、スピーチュラが上へ逃れたことで、戦場にふと隙が生まれた。
その期を見逃さずに空へ飛び上がったローダーを見上げた後、エースが仲間を見渡した。
「行きますよ、ブロー、カールズ。
デルタチーム、フォームアップ!!」
「おう!」
「了解っ!」
掛け声も高らかに、ローダーが描く円の軌跡の中心を貫いて、三体が舞い上がる。
コアとなったローダーに、エースは右腕、ブローは左腕、カールズは足に変形しドッキングする。
現われた顔をマスクが覆い、カメラアイは緑の光を宿す。
白く輝く巨体は、何者をも打ち倒す、正義の化身。
「絆、信頼、拳に込めて・・・重ねよ心の絶対シグナル! イデルタ、激参ッ!!」
ビル群をなぎ倒し降臨するイデルタ。しかしそれにも怯まず、スピーチュラはお得意の糸を吹きつけてくる。
白いボディに幾重も重なる糸を、けれども腕の一振るいで引きちぎると、イデルタは敵へと拳を振りかぶった。
しかしその拳は空を切る。
いくら糸を無効化したといっても、スピーチュラの素早さまでは封じていないのだ。
空中に巡らせた見えない糸をたどり逃げる敵は、どんなに追いすがってもすぐに身をかわしてしまう。
「らちが明かねーなら俺に任せろ、イデルタ!」
と、唐突な背後からの声に、スピーチュラが振り返った。
イデルタに気を取られ、すっかり眼中に入れていなかったもう一人の存在をはたと思い出して。
ガシャン、と肩パーツを起こすイーガル。そこから生まれる風は、倍速で勢いを増し、瞬く間に辺りの空気を巻き込んで竜巻を生み出した!
慌ててその場を離れるスピーチュラには目もくれず、イーガルはその竜巻を虚空に放つ。
空を裂き、全てを巻き込み吹き荒れる旋風!
「ガルサイクロォオ――――ンッ!!!」
凄まじい風圧に、思わずイデルタさえ腰を落とした。唸る風に足を取られ、スピーチュラの身体が宙を滑る。
とっさに糸にしがみつこうと掻いた爪先は、しかし、何もつかまないまま空を切ってしまった。
気がつけば、張り巡らせてあった糸は跡形もなくなっている。
「そうか、風で糸を吹き飛ばしたのか! 助かったぞ、イーガル!」
「礼は良いさ! やっちまえ、イデルタ!!」
「ああ! トリスカリバーッ!!」
イデルタが手のひらを天に掲げる。すると、それを待っていたかのように、一振りの剣が降りてきた。
白刃に映る姿は、まるで神のように輝いて。
剣を、構えた!
「はあああああぁぁぁぁッ!!!」
イデルタの覇気に呼応して、トリスカリバーの柄のエンブレムが輝き出す。刀身は次第に眩くきらめき、白くオーラの炎をまとう。
それを握るイデルタの眼差しは、風の渦の中心を、そこに捕らえられたスピーチュラを真っ向に据えていて。
擦り切れそうな絶叫を上げた敵の、ど真ん中を貫く!
「 デ ル ト イ ド ・ ブ レ イ ク ・ ア ウ ト !!!」
輝く剣は、スピーチュラの身体を中心から突き抜いて。風の渦を突き抜け着地したイデルタの背後で、竜巻を吹き散らしながら敵が爆発した。
シュウウ・・・・・・と燃え尽きたかのようにオーラの消えたトリスカリバーを傍らに下げ、イデルタは仲間へ顔を向ける。
爆風を押さえ込み切ったイーガルが、疲れた顔に笑みを乗せ、笑っていた。
それに釣られ、笑ったような気配をイデルタが見せた後、シュン、とフィールドが消える。
―――戦いが終わったのだ。
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