短編
6
「お?なんだこの騒ぎ、なんかおもしれーことでも始まるのか?」
理事長の後ろ……今も怒鳴りあいが続く中に面白がるような声が聞こえた。
「思ったよりも早いな」
しゃがみこんだまま振り返る理事長の奥にいたのは気怠そうな雰囲気を持ついかにも不良という男だった。
「あー、ちょうど近くで昼寝してたんだよ。で?俺に用事ってなに?」
「ちゃんと教室には居なさい。頼みたいのはこの子を保健室まで運んでほしいんだよね。今、入口あたりがうるさいだろ?あれに捕まると厄介だからお前を呼んだんだよ」
理事長は少し体をずらし、相手にオレを見えるようにした。
「本当は私が保健室まで連れて行ってあげたいところなんだけど、後ろの騒ぎを鎮めないといけないだろ?」
「ふぅ〜ん、分かった。そいつを保健室まで連れて行けばいいんだろ?」
そういうと男はオレに近づき腕を引っ張る。
「痛ッ!?」
「あ、わりぃ……」
オレの上げた声に謝りながら手を放す男。
「こら!この子は頬と背中を打ち付けて怪我しているんだからもう少し優しくしてあげなさい」
「わかったけど、それよりこの痛がり方おかしくねぇか?」
男はオレの前にしゃがみこみ、オレの制服のシャツを無理やり引っ張り上げた。
「うわっ!?」
「こらー!なに……を、これは……」
「ボコボコじゃねーか……しかもこれ喧嘩じゃなくて一方的な暴力の怪我だぜ?」
シャツを捲られたオレの肌にはいたるところに痣ができていた。
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