短編
4
「だ、だれ?」


ボクの部屋は二階にあるはずだしこんな近くで外から声をかけられる訳がなかった。


「キョロキョロしないで正面見てみな」

「正面?」


たしかに正面には大きな木があるけど……


いた!

声の主は目の前の大きな木の太めの枝に座ってこっちをみていた。


「3日前から夜になると月みてたよな?」

「確かに見てたけど……」


木の上から話しかけてくる男に答える。
なんで知ってるんだろ?
月の光が背になってるから、男の顔が見えなくてなんだか怖い……


「なんで知ってるのかって顔してるな」


男の方からは月の光でボクの顔が見えるみたいだった。


「不審な顔するなよ。オレは上の階に住んでる皆川 陵(みながわ りょう)だ」


皆川 陵が言うには夜に学生寮から夜抜け出すのにこの正面の大きな木を使って下に降りていた。
3日前にも抜け出そうとしたとき、ボクが泣きながら月を見上げていたのに気がついたらしい。

そこから3日間毎夜眺めている姿が気になって今日声をかけてきたという。


「話をしたいんだが、部屋いれてもらってもいいか?」

「ボクの部屋に?」

「なんで月見て泣いてるのか俺は知りたいし、知り合いに話せない内容ならお前のことを知らない俺に話してスッキリするのもいいんじゃないか?」


誰にも言わないし手も出さないしどうだ?
と、言うその言葉はボクにはすごく魅力的な言葉に思え男が部屋に入ることを了承した。



この燻った思いをボクは誰かに聞いてほしかったんだ。

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