短編
1
付き合っていた彼女に
「好きな人ができたの」
と、言われふられた。
オレはすぐに幼なじみ兼親友の家に転がり込んだ。
親友のベッドを占拠して思いっきり泣いた。
その間親友は何を言うでもなくベッドに腰掛けずっと頭を撫でていた。
「はー、泣いたら大分落ち着いたわ」
うつ伏せのまま首だけ親友の方を見る。
「泣きすぎで目元腫れてるぞ?」
そう言って親友はオレの目尻に溜まっていた涙をタオルで拭ってくれた。
「昨日まで仲良かったのにまさかいきなり振られるなんてさ」
昨日の帰り道は手をつないで仲良く帰ったはずなのに。
「女の気持ちは分からんわ…」
「まぁ、お前の良さが分からないな女だったんだよ」
オレの呟きに親友はそう答えた。
「お?なになに?まじ照れるんだけど」
いつもはオレが失敗したりすると「バーカ」とかいって笑ってくる親友の誉め言葉に照れる。
「ほんとにお前の良さは俺が一番分かっているから」
頭をなでながらそう言い微笑む親友。
幼なじみでイケメンな親友の微笑みに一瞬見とれてしまい誤魔化す為に軽口をたたく。
「なんだよ、めちゃくちゃ褒めるな。そんなこと言うと惚れちゃうんだぜ?」
ウヒヒっと笑ってうつ伏せ状態から起き上がろうとすると手首を掴まれグッと引っ張られて目線を合わせられる。
「まじで俺に惚れて?」
真剣な眼で見詰められる。
「え?」
「お前の良さが分からない女よりも、ずっと小さい頃からお前を見てきてお前の良さを全部分かっている俺に惚れてしまいなさい」
そう言うとニッコリ笑ってオレを抱きよせた。
その余裕な態度とは裏腹に親友の心臓の音があり得ないほど早くて
いつも余裕綽々な親友がすごく緊張してるのが伝わってきてそれがなんだかすごく嬉しくなってきた。
「それなら惚れさせていただきますわ」
オレがそう言うと親友は力強くオレを抱き締めてから、力を緩め目線を合わした。
「これからずっと惚れさせてやるからね」
そう言うと親友は綺麗に微笑んだ。
「オレが声かけたらホイホイ付いてくるような女にお前は勿体ないよね」
そう小さく呟く親友の声は抱き締められたまま気持ちよく寝ていたオレには聞こえなかった。
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