短編
4
「好きだ」
込み上げてきた想いを声にする。
水槽を見上げていた瞳が大きく見開き、バッっと三笠が勢いよく振り返った。
「三笠が好きだ」
もう一度自分の想いを声にする。
気が付いてなかっただけでずっとこの幼馴染みのことが大事で一番だったんだ、だから誰と付き合ってもどんな子と付き合っても長続きするはずなんてない。
オレはこの幼馴染みのことをただの幼馴染みともただの友達とも見ることもできなかった、だからセフレという最低な繋がりとして縛り付けてそばに置こうとしていた。
男友達としてはおかしい頻度で連絡をとり、会う機会をとりつけ、逃げられないように上手く誘い、元彼女たちには一切つけなかった独占の証を身体中に刻み付けたりもした。
なんでそんなことしていたのかは簡単なことだ、ただオレは三笠のことが好きだったからだ。
「諏訪……何言って……」
「やっと気が付いたんだ……オレはずっと三笠のことが好きだ。三笠は……俺のことどう思う?」
今オレはどんな顔をしているのだろうか?
三笠はゆらゆらと水面の影がうつる顔でまっすぐオレを見詰めた。
キュッと一度口を引き締め三笠は口を開いた。
「……俺、ずっと諏訪のことが好きだった。諏訪はあの日のこと覚えてる?俺達がただの幼馴染みじゃなくてこういう関係になったときのこと…」
「……ご、ごめんあんまり覚えてなくて……」
「うん……うん、知ってる。お前サラッと俺の告白流して聞いてたかんじだったから。でも流されることを覚悟であの日俺は告白したんだ……諏訪が男に興味ないの知ってたし、そのままゆっくりと離れていくつもりだったんだ」
淡々と話す三笠に海の中にいるかのように息が苦しくなる。
「予想外だったのは俺の告白聞いたあとお前は返事をするわけでもなく、じゃあヤッてみよっか、なんて言ってきたんだ。ひどいヤツだよ諏訪はさ……俺の告白聞いてそんなこと言うなんてさ。ただその時男にちょっと興味あったんだろうな。でもそれよりも俺はバカでアホだったからその誘いに乗っかったんだ、どんな関係でも諏訪の側にいたいって思っちゃって」
「ごめん……」
「謝んなくていいって、俺さなんとなくあのとき諏訪考えてること分かってたんだ。だから気持ちはない偶然興味のある時に告白してきた気兼ねなく遊べる男友達って立場で納得してたんだ」
そう言って三笠は苦笑いのような顔をして乾いた笑いを浮かべまっすぐオレを見た。
「……今更なんだ。四年たって今更好きだ言われても俺にはもう信じられないし俺の諏訪への気持ちにはかなり前に区切り付けれてたから、そろそろこの関係を辞めようって言おうとしてたとこだったんだ。
今回いつもに比べて会おうって呼ばれる期間が開いてたからちょうどいいなって思ってたんだと、まさかホテルじゃなくて水族館に誘われるとは思ってなかったけどね」
と三笠は苦笑いを浮かべた。
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