長編
10
「雪之丞おいでー」

うにゃーんとかわいい声で鳴き、雪之丞が机の上に乗ってオレの頬にすりよってきた。
かわゆい。



今は朝方で智は仮眠室で寝ている。

さすがにここ何日か働き詰めみたいだったから、言い聞かせて日付が変わる前に寝てもらった。

オレは眠くはならないので書類の整理をしたりパソコンで入力したりと大活躍だ。

急ぎの書類と明後日までに提出分も終わり積まれまくってた書類はほとんどなくなっている。

「朝日でも見に行きますかー」

雪之丞を抱き抱え、天井をすり抜け屋上に出る。
フェンスの上に雪之丞を膝にのせ座る。

生身の人はやっちゃいけないんだぜ?



ぼーっと徐々に明るくなり星が消えていき、遠くに見える街並みの奥から昇る朝日を見詰める。


気が付いたらこの学園に霊として浮いていた。

学園の生徒の恋や友情を観察したり、中庭の花壇の成長期を見たり、雪之丞と遊んだり、夜になったら星を見たりとなかなか楽しい霊ライフを満喫してたけど、まさか話ができる人ができるとは思わなかった。

なんで自分がここにいるのかも分からないから、毎日ちょっとした楽しいことを探してこのまま消えるまでひとりで過ごしていくものだと思ってた。




「やばい。たのしい」

転校生劇場もかなり面白かったけど、智と話ができて自分で思っている以上にウキウキとした気持ちが涌き出てくる。

智はまだ二年生だからあと二年近く学校にいるけど、卒業したらオレはまた一人ぼっちになるのかな。

ニャーンと雪之丞が頬を舐めてくる。

「ごめんごめん、雪之丞がいたな」
膝の上で立ち上がり頬を舐めてくれた雪之丞のあごを撫でるとゴロゴロと喉をならす。





太陽は昇りきり今日もいい天気になりそうだった。

[*前へ][次へ#]

12/55ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!