長編
16
龍也さんが鍵を(といってもカードを差し込んで開けるから鍵じゃなくてカードキーね。ん?鍵でいいのかな?)開けて「どうぞ」と部屋に入るのを促してくれた。


扉を抜けるとそこは……


「龍也さん……ほんとのこと言ったほうがいいよ……」

「ん?どうした?」

「この部屋は一流企業に勤務する二十代後半の出世コースを真っ直ぐ突き進んでいくできる男の部屋だよ!」


玄関……いや!ここはあえてエントランス呼ぼう!
そこでスリッパ(おしゃれ)を出してもらいリビングへと続くドアを開けると……


全体的に物が少なくて白と黒で統一されたお洒落すぎる家具が完璧な配置で置いてあってさらに窓際におしゃれなお部屋の代表的観葉植物のウンベラータがあった……。

ここには絶対どこかにエリートサラリーマン(二十代後半)が潜んでいるはず!!
じゃなかったら龍也さんが高校生に変装したエリートサラリーマン(二十代後半)かも!?


ここは高校生の暮らしているような部屋じゃない!


「エリートサラリーマンどこにいる!?」

「いやいや、いないからな?ほんとに俺の部屋だぞ?」

「うそだ〜!オレの部屋と全然ち〜が〜う〜まったくち〜が〜う〜」


ゲームや雑誌が置いてあるオレの部屋と違いすぎる……

こんな大人の男の匂いが漂う部屋は友達とか親衛隊の子達の部屋でも見たことないよ。
みんな大体ゲームと雑誌か漫画が転がってたよ。
一体オレと何が違うのだろうか?
部屋の前の部屋の間取りと同じなはずなのに……


「そこの右の部屋が使ってないからあとでそこに荷物を運んでもらえばいいか?」

「うん、ありがとー。よろしくお願いします」


深々と頭をさげる。
何から何までほんとにありがとうございますエリートサラリーマン(二十代後半)様。

寮は相部屋が基本だから一人部屋として使うと一部屋余る感じになるんだよね。

大体の部屋の間取りは玄関入ってすぐ左側が下駄箱で、廊下の左右に部屋があってここが個人の部屋に なりま〜す。
で、右側にトイレがあって進むとドアがあって開けると左に洗面所とお風呂、右がキッチン、正面がリビングだね。
さらにはベランダまでついています!
食堂もあるしクリーニングの業者さんもいるので部屋の洗濯機を使う生徒さんは少なめみたいだね。
よくある2LDKのマンションと思ってくださ〜い。


ちなみにオレは引きこもり体質なので料理も洗濯も自分でやります!
部屋帰ってから着替えてまた食堂行くのってめんどくさいし、自分のはいたおパンツ他人に洗ってもらうのって恥ずかしくない?
オレだけ?
みんな恥ずかしくないのかな?

部屋の入り口で立っているのもなんですし。


「おじゃましま〜す」

「遠慮はするな、今日から陽斗の部屋でもあるんだからな」

「はーい」


と、返事してみたもののまだ慣れないしこそこそ部屋に入ってソファに浅く座ってみる。
ものすごい座り心地のいいソファ!
手触りも固さもすごくいい!


「借りてきた猫みたいだな……とりあえずコーヒーでも淹れるか」

「あ!オレ淹れるよ〜」


慌てて立ち上がるとそっと龍也さんが肩を押してまた座らせてくる。


「いいから、まだ陽斗はだいぶ疲れているだろ?今日はオレが淹れるから今度は陽斗が淹れてくれ」

「お言葉に甘えます。あ、オレコーヒー淹れるの上手みたいだから楽しみにしててね」


味に煩い会長が旨いって飲んでたからたぶん美味しいと思う。
あ!オレ、コーヒー3:ミルク7のカフェオレじゃないと飲めないんだよね。
半分じゃないからオレでもないか……オレオレカフェ?


「カフェオレのミルク多めをお願いしてもいい?」


ミルクたっぷり入れないと飲めないとかちょっと恥ずかしいけど一緒に暮らすなら知ってもらったほうかいいよね!と、開きなおってみる。


「了解。いい子で待っててくれ」


オレの頭を軽く撫でて、龍也さんは対面のキッチンにコーヒーを淹れに行った。


コポコポとコーヒーメーカーの音に、芳ばしい匂いが部屋に広がる。
ちょうどいい固さのソファに深く座りなおしてみる。

ふぃ〜

思わずぐで〜っとしちゃう。
龍也さんの優しい気配がするこの部屋はシンプルだけどすごく……おちつく……なぁ……

カチャカチャとコーヒーを用意する音や匂い空間全部が心地よくて

オレは目を閉じた

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