長編
14
「陽斗さまに何かあったら……」


何処からか取り出した丸い林檎を楓ちゃんは片手でグチャリと潰した。


「城戸の頭もこうなるって覚えておいてくださいね」


ニコニコと微笑む楓ちゃんに龍也さんは無言で頷く。


「か、楓ちゃん?」


かわいい顔してそんな怪力だったの?
オレ知らなかったんだけど………


「やぁだ。陽斗さま、これオモチャの林檎ですよ。僕が林檎を素手で潰すなんて出来るわけないじゃないですか〜ビックリですよぅ」

「そうだよね!良くできたオモチャだったからビックリしちゃったよ」


林檎の匂いとか汁まで再現してあるなんて最近のってすごいね〜
オレと楓ちゃんは二人でエヘヘっと笑いあう。


「それじゃあ僕は教室に戻りますねー!陽斗さまはゆっくりお休みくださーい。あとラインもいれてくださると隊員達も喜びますー」


手を大きく振りながら楓ちゃんは廊下を走って帰っていった。
後ろ見ながら全力で走ってるけど大丈夫なのかな?


「……あれが陽斗の親衛隊隊長か……」

「ん?楓ちゃん?」

「あぁ、噂では聞いていたが実際初めて会った」

「かわいいでしょ〜他の隊員の子達もかわいいんだよ」


そう教えてあげると龍也は顔を強張らせた。


「他の隊員もああいう感じなのか?」

「だいたいそうだね〜よく冗談とか言ってくれて楽しいよ」

「…ど…んなのだ?」

「んー〜?瓦を20枚素手で割れるようになったとか、バットをキックで5本折れるとかそんなんだよ〜。あんなに細くてみんなかわいいからすぐ冗談だってわかっちゃうよね」

「……ああ……そうだな……(たぶん本気で出来るんだろうな。さっき掴んだときかなり引き締まった筋肉をしていたからな相当鍛えあげられた感じだった、他の隊員も同じ可能性が高いな……副委員長が陽斗の親衛隊は怖いって言ってたがそういう理由か…)」


オレの顔を見ながら龍也さんは何か考え事をしてるみたい。

なに考えてるのか分からなくて、首を傾げると頭を撫でてくれた。


「えー?なになに?」

なでなでだ〜
撫でられると気持ちよくて嬉しくなっちゃう。


「陽斗のとこの親衛隊は楽しそうだなと思ってな(一歩間違えたら危険な親衛隊になりそうだが、陽斗の意思にそぐわないことはしなさそうだし、陽斗自信も親衛隊を使ってとかおかしなことを考えもしないだろうし)」

「うん、また皆で中庭でお茶会したいな」


親衛隊の子達が作ってくれたお菓子も淹れてくれたお茶もすごく美味しいし、さらに天気のいいとき外で食べるとピクニックみたいですごく楽しいんだ。


「充分休んで元気になった陽斗をみんなに見てもらえばいい、心配かけたんだろ?その時は俺も参加させてくれないか?」

「ええ?龍也さんくるの?お茶会とかしてるの想像できないけど、来てくれるならオレも嬉しい!」


わーい!
ブラックコーヒーとかしか飲まなさそうなのに、紅茶やケーキ、クッキーに囲まれている龍也さんか〜
楽しそう!
なんかウキウキしてきた!


「参加で決まりな。陽斗の親衛隊達にはきちんと挨拶したいしな」

「うん!みんな礼儀正しい子達ばっかりだからね」

ちゃんと挨拶してくれるよ。
挨拶は当たり前のことだしね!

「そうだな、認めて貰うために気合い入れていかなくちゃだな」


ニヤリと笑う龍也さん…
そんなに初めてお茶会行くのってやっぱり緊張するのかな?


あとで楓ちゃんにラインでも送っておこうかな〜と寮に向かって二人で歩き出した。




(美人でかわいい奥さんを貰いにいくんだ。姑、小姑のイビりぐらい耐えないとな)

(きゃーん、陽斗さまからのラインだー!……城戸もお茶会くるって?そふぅ〜ん、の勇気認めてやるけど、それなりの覚悟をみせてもらわないとねぇ、うちの陽斗さまを貰いたいならね)


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