長編
11(side城戸 龍也)
(side城戸 龍也)

季節外れの転校生がこの学園に来た。


顔が半分異常みえない瓶底めがねに、モジャモジャした髪は阿寒湖の毬藻を彷彿とさせた。
この毬藻は転校初日からなぜか生徒会役員共に好かれ、奴らは生徒会の仕事をサボって毬藻の尻を追いかけるようになった。
さらにはバスケ部のエース、一匹狼の不良も毬藻の尻を追いかけていると部下達が言っていたな。


興味などないが……


それにしてもモジャモジャの頭あれはカツラだな、まぁ、そんなことよりヤツは声がでかくてやたら煩いさらには自分の考えを押し付けて否定されると暴れだすという幼稚園児以下の頭をしているようだった。


次またあったら阿寒湖に沈めてやろうか。


この三週間ヤツが暴れるせいで部下達が止めに入り怪我をし、物が壊れるせいで書類が増えていく一方だ。

やはり阿寒湖という故郷にコンクリに詰めて還してやろうか……


そんなある日ふと気が付いたことがあり鬼の様な顔で書類を片付けている副委員長の笠井 雪路に聞いてみる。


「生徒会のバカどもが仕事をサボっているはずなんだがなぜ処理された生徒会の書類があるのか?」


確か生徒会のバカどもは毬藻の尻を追いかけているだけで仕事をしないクズに成り果てたはずだが、期限ギリギリとはいえ書類がきちんと届けられている。


「今頃気が付いたのですか?生徒会室に天使がいるからですよ」

「は?天使?」

「学園の生徒達がそう呼んでいるんです。ちょうどまだ来ていない書類があるので様子を見がてら取りに行ってあげてはどうです?私が行きたいのがやまやまなんですが今手が離せないので……あと、くれぐれも優しくしてあげてくださいよ、あそこの親衛隊恐ろしいんですから……」


一気に捲し立てられ風紀委員室から追い出されたので、仕方ないかと生徒会室に向かうことにした。




生徒会室につきノックすると返事のようなものがあり扉を開けるとほんとうに天使がいた。


絵画から出てきたのかと思うほど恐ろしく整った顔に、薄い茶色の柔らかそうな髪を耳にかけ、はっきりとした二重の瞼の奥に深い翡翠の瞳。


会計の和泉 陽斗というのはすぐに分かった。
生徒総会のときなど壇上の隅に立っているのを遠くで見たことある程度だったが、まさかこれ程まで綺麗という表現が似合う男だとは思わなかった。


他の生徒会の奴等には会議等で話すことがあったが、会計はいつも会議に顔を出すことが無く俺も気にも止めていなかった。



ハッキリ言おう一目惚れだ。


床に座り込み涙を流す姿に一目惚れをした。


涙を流す姿に一目惚れをしたのだが悲しい涙はもう見たくなくて拭ってやり、なぜ泣いていたか聞いてやると話をしてすっきりしたのか生徒会会計を辞任するといった。


すっきりした顔もかわいいな。


性格も見た目以上に良くさらに好きになった。
辞任するなら風紀に引き込めば一緒にいる時間が長くなるから大賛成だ。
よしさっさと生徒会顧問のところに行こう。


生徒会顧問の如月先生も会計のことを気にしていたらしく辞任の話はトントン拍子に進んでいった。


すると会計は今の役員専用の寮の部屋を移動したいと言い出した。


それじゃあ俺の部屋で暮らそう。


たしか寮の空室は何室かあったはずだが……無かったことにしよう。


良いことに会計は寮監室の電話番号をしらないらしく俺はスマフォを取り出して寮監の茂さんに電話をした。


ちょうど如月先生が帰ってきたらしく二人で楽しそうに話し出したので耳を傾けつつ、電話に出た茂さんと話をした。


話をした内容を簡単に言うと……

陽斗が会計を辞任するので部屋を移動したいのだが、今までの心労を思うと部屋に一人で残すのは忍びない、だから風紀委員長の寮部屋は広く部屋も余っているから俺の部屋に移動させることにしたい。


と、茂さんに伝えると納得して手続きをしてくれると言ってくれた。
その際、陽斗の体調の心配もしていた。
さすが茂さんは優しいな。


これで元会計となった陽斗は俺の部屋で一緒に住むことになった。
新婚生活が非常に楽しみだ。


如月先生は何か言いたげだったが死線…いや、視線を向けると納得してくれたのか黙った。
生徒の気持ちが分かる良い先生だ。


さて俺のかわいい嫁と俺の部屋に向かうかな。


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