story.
花火
夏の打ち上げ花火のように、
一瞬だけでも、輝いていたかった。
「澪、最後に花火が見たい」
なにもかも諦めたように、目の前の男は微笑んだ。
「一緒に居たいとか、無意味なことは言わないよ」
でもさ
「一緒に死にたいと、思って仕舞うのは事実なんだ」
「うん」
細い腕に抱き締められて、どうしようもなく泣きたくなって。
そうして貴方との日々を、削っていくのかと
どこかで冷静に感じた。
「花火位、何回でも見せてあげるから」
どうか、どうかお願いです、
「花火を見て笑った澪が見たいよ」
私から貴方を取り上げないで。
「澪、笑っていて」
澪、そう名を呼ぶ貴方が愛しくて
今年も一人花火を見て微笑んだ。
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