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05.


――楽しい時間っていうのは、終わるのを本当に早く感じるってよく言う。
それは本当だと思う。アレンと遊んでたあの数日間を、本当に短く感じたから。


―――



『―――え…?』
「ごめん、なまえ」
『嘘…。アレン、本当?本当に行っちゃうの?』
「うん。僕達は旅芸人だから…。
本当はもっと一緒に居たかったんですけど、ごめん」
『でもそんなっ…急すぎ…明日、なんて』
「だから、楽しみましょう?今日を」
『うん―…』




へろへろになるまでいっぱい遊んだ。
最後なんだって、わかってるから。
最後なのだから、へろへろになっちゃうまで。
そう思って、ずっと、ずっと遊んだ。


時間は本当にはやくて。もう空が赤い。
空が赤くなる頃には、私達は家に帰らなきゃいけなかった。

『もうこんな時間…!?』
「ですね…。そろそろ帰らないと、危ないよ?」

心配そうな眼をしたアレン。
私の顔の前に小さな手のひらを差し出して、行こう、と言っている。
私はその手を握った――。

『待ってアレン!私、まだ行きたいところがあるの』
「でも…」
『私のわがままだってわかってる…。
けど、けど私はッ。アレンと一緒に行きたいところがあるの。
だから、お願い。最後に一回だけ、ねっ?』

そういうとアレンは照れたような顔をして、頬をかいていた。
仕方ないですね、とアレンは言って優しく笑った。

















大きな木がある場所についた。

「此処で何をするんですか?」
『名前を彫るの!
私とアレンが、此処で遊んだっていう跡をつけるんだ』
「でも彫る物なんてな…」
『はいっ、コレ彫刻刀』
「危ないもの持ってるんじゃないですよ。
怪我でもしたらどうするんです?馬鹿ですか?」
『ヒドッッ!!!
―まあ馬鹿なのは認めるけどっ。
はい、これアレンの分。彫ろうよ』
「―ですね」





『出来たぁっ!!』

不器用な文字で、"なまえ アレン"と彫ってある。
それがくすぐったく嬉しくって、自然に頬が緩んだ。

「満足した?」
『うんっ』
「じゃあ、帰りましょう」
『―うん…』

アレンの手をぎゅっと握って、暖かく光ってる赤い道を帰って行った。














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