08.
何故か喋る壁の声がして、体が揺れてしまいそうな感じの音を立て、扉が開く。
―さあ、一歩を踏み出すの。
踏みだして、歩くの。貴方を守るために。
貴方と、……アレンと、また出逢うために。
そう決心して顔をあげる。
「あ、初めまして。新しいエクソシストの方ですね?」
聞き覚えのある声。
聞き覚えがあるけれど、若干低くなっている。
『え―――……?』
いやまさか。そんな事。
こんな、こんな、何時死んでしまうかわからない処で?
「……その声!! なまえ…!!!?」
貴方が驚きの声をあげる。
貴方が私の名前を呼んでくれた。
貴方が私だとわかってくれた。
アレンが生きていた。
アレンと逢えた……!!!
走って。
走って。
貴方が腕を広げていてくれていて。
アレンが笑って待っていてくれていて。
アレンが近くなって。
ジャンプ。
アレンの腕の中に飛び込む。
『アレンッ…!!!!!!』
ほろほろ涙。
私の瞳(め)から大粒の涙。ぽろぽろ。
「なまえ…!!」
貴方の声が貴方が泣いている事を知らせてくれた。
涙交じりのアレンの声。
私の背中に回っているアレンの腕が震えている。
『やっと逢えた……』
「僕は逢えて嬉しいです。なまえは?」
『勿論嬉しいわ。
でね、私アレンに言いたい事があるの…』
アレンの肩に沈めていた顔を上げ、アレンの顔を見る。
『あの日、言えなかった事っ……。
私、アレンの事――…』
「好きです。
あの頃からずっと好きでした」
『―あれ、』
私が言いたかった事がどうしてこの人にわかるのだろうか。
「僕と同じ気持ちですよね?」
なんだ、こういう事。
『うんっ』
お互いあの日から、惹かれあっていたんだね。
道化師のキミに。
(逢いたくて)
(逢いたくて)
(キミの背中を追い掛けて)
(やっと逢えた)
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