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04.




「お―いリナリー、こっちさ―!」


ヘラヘラヘラ、そう笑いながらハートを飛ばす赤毛眼帯。

ナマモノラビだ……!!

息してる、動いてる、立体感ある、触ったらあたたかいのかな……!?


「ラビ、遅れてごめんなさい」

「いいんさいいんさ、気にしてないから!!」

「そう?なら良かった」

「お?その隣の子は初めて見る顔だな」

『あびゃびゃびゃびゃ…、は、はじっ、初めまして………』


私噛みすぎ…。
これ絶対顔赤くなってるって…。
あびゃびゃびゃとか何自分……。


「あはは!可愛いさ―」

『くぁっ、くぁわっ!?』

 
アヒルか。
我ながら阿呆だと思う。


「俺はラビっつ―んだけど」


知ってますとも。


「あんたは?」


『栗木田杏子、です…!
良かったら仲良くしてやってくださいな』


嗚呼良かった後半からやっと本調子に戻った。
にしてもナマモノラビの破壊力凄まじいぜ…!!
なんかもう色気が無駄に出てる気がする。
これで歳そんなに変わらないなんて神様はずっこいぜ!!


「はじめまして」


下の方から声が聞こえた。
視界の下の方に映るこの白髪(失礼)は……。


「我らはブックマンと呼ばれる相の者。
理由あってエクソシストとなっている。
私の方に名は無い、ブックマンと呼んでくれ」



キタ―――――ッ!!!!
やっぱナマモノは良いね良いね、かっこい―ね!!


「リナリー嬢達も来た、今回の任務を説明しよう」


ブックマンがそう言うと穏やかだった場の空気が一気に緊張に支配される。
やっぱりプロだ、凄い。きちんと切り替えられている。

それに比べて私ったら…!
ごめんなさい、不謹慎にもドキドキワクワクしてごめんなさい…!!
だってあたしの近くにラビが居るんだもの、卒倒モンなのによく堪えてるよ私!!


「今回の調査は小さな村だ。
その村には伝説があってな、その伝説に関わる森に入った子供や女が行方不明になっているとの事。
また、その森からは夜な夜な呻き声の様なものが聞こえてくるらしい。
それを調査せよとのこと」

『それって…、神隠し、ですか?』

「そんなものだろう」

「それで、その伝説って…?」

「昔、その村には不思議なものが宿るという大きな樹があったらしいさ。
樹には、友達が居たらしい。
樹は、その友達が大好きだった。
だけど、友達がある日突然、とても理不尽な理由で殺されてしまった」



『……うそ』


「樹は悲しんださ。
悲しみはだんだん歪んでいき、樹は人を憎む様になっていった。
…それから、その樹の近くに行った者は、帰ってくる事は二度となかったらしい」


話を聞いたら、何だかずん、と私の何かが重くなった気がした。
友達は何故殺されたのだろう、そして樹はきっと寂しかったんだ。
だから、友達が出来たことが嬉しかった。
その友達が本当に好きだったんだ。
だから、人を憎む様になってしまったんだ。



「…でもそれじゃあ、今回の事件と噛み合わないわ」

「今回の事件は、自分から行っているものではない。
何かに誘導されている可能性が高いと思われる」


『誘導…、それは、樹?』

「恐らく。
行かない様に鎖で繋いでいたとしても、翌朝にはその繋がれていた人物はおらず、鎖には血痕が残っていたらしい」


「確かに、操作されてそうね」


「……だとしたら、今回杏子危ねぇかもしれねぇさ」


『え?何で?』


「今回被害に遭っているのは友達とどこか一つでも似てるヤツに限られてるんだとよ」


がん。
重い鈍器で頭を思い切り攻撃された様な感覚を覚えた。

「それって!!
杏子ちゃんが友達と似てるってこと…!?」

「そういうことだ。
杏子嬢、今回が初任務と聞いた。
恐らく杏子嬢がこの任務にあてられたのはこの条件にあっていたからだろう。
今回の任務が、トラウマになるかもしれないが安心するが良い。
私達が、必ず守ろう」


「だ―いじょうぶだって杏子!!
俺がちゃんと守ってやっから!!」


「そうよ!杏子ちゃんには絶対手出しさせないから安心してね!!」


『…皆、ありがとう』




皆の心遣いが本当に嬉しかった。
けれど、その時の私は、自分のことよりもその樹のことを気にかけていた。

  















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あきゅろす。
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