俺は狂ってますか?
16
余りにも決断を下すのが早い裕に、
俺は目を丸くする。
呆気に取られる俺を余所に、
裕は自分の考えを
ポツリポツリと小さな声で話し始めた。
「出来ない……
出来るハズがない……」
押し殺すような
自嘲的な笑みを洩らし、
尚も裕は言い続ける。
「風海は俺を
利用するつもりなんだろ?」
宙に彷徨わせていた視線が、
俺へと向けられる。
瞳は絶望からか、
黒く濁っているように見えた。
「俺の思いを利用して、
また邪魔な奴らを
殺せとでも命令するのか?」
驚く程に冷たい裕の声に
背筋がゾクリと粟立つ。
そんな俺を見透かしたのか、
裕の口元がゆるりと弧を描いた。
「けど……
風海に利用されるって分かってて、
それでもそれに
乗ろうとしてる俺がいる……
それでも構わない。
寧ろ本望だと思う俺がいるんだよ」
語りながら、
裕は狂ったような笑みを浮かべた。
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