俺は狂ってますか?
17
「そうだ。無理なんだよ。
風海に逆らうなんて俺には無理だ。
例え利用されると分かっていても、
その言葉に逆らうなんて
俺には出来ない……だから……」
俺の耳元へ唇を寄せ、
裕はソッと囁いてくる。
「俺をいくらでも利用してくれよ」
その声は嘆き、悲しみ、苦しみ、憤り、
様々な感情が混じり合った
複雑な声だった。
余りにも痛々しい声に
心のどこかがチクリと痛んだ気がした。
その痛みを無視し、
裕の肩を押し、両手で頬を挟み込む。
顔を覗き込めば、
涙を流しながら笑む裕と目が合った。
声を出さず、
微笑みながら涙を流す裕は、
その人間離れした美貌も相俟ってか、
堕ちた天使のように見えた。
きっとこんな事を俺が口にすれば、
裕は俺の事を悪魔だと例えるんだろう。
誰もを闇に引きずり込み、
歪ませる悪魔……それが俺なのだから。
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