SONG
ESCAPE
息が苦しくなるほど走った
けど止まるわけにはいかない
周りはアイツに気付かず
必死で走る僕を不思議そうに見る
なんで気付かないんだ！
僕には姿も
追い掛けてくる足音も
獲物を捕まえようと伸ばした手が起こした風も感じるのに
近くのサラリーマンがアイツに気付いた
僕を見て
アイツを見て
僕を見習ってか恐怖からか
走り出した
また周りが不思議そうな顔をした
アイツが近くの親子を掴み上げた
辺り一体がやっとアイツに気付く
親子の叫び声とゴリゴリいう鈍い音を背に僕は走った
周りも一斉に逃げ出した
アイツは逃げ足の遅い奴を追い掛けて行った
一体アイツはなんなんだ
僕の世界にはいないはずのアイツ
アイツがいなくなり止まっていたら
今度は別の奴が僕目掛けて牙を剥く
コイツはアイツより足が早い
尾から出した糸で周りの奴が捕まって
牙の毒で溶けだした
まずいまずいまずい
僕はまた走り出した
アイツはでかい体だったし一匹だったからとりあえず走ってればなんとかなった
けどコイツは僕の腰位までの高さで何匹もいる
でも諦めずに走った
周りの奴が次々に捕まっていく
また一人…また一人…
気付くとコイツもいなくなった
みんな獲物を得たのかな
次は何が現れる？
今度は逃げきれるのか？
この世界は化け物だらけ
逃げ切れなければ食される
僕はいったいいつまで逃げ延びることができるだろう
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