NARUTO
三
生徒会室にたどり着くとサクラはシカマルに声を掛けた。
「少しだけ手伝ってもらってもいいかしら?」
「・・・好きにしろ」
パソコン作業をしているシカマルは、目線だけ上げて告げるとまた作業を始めた。
「じゃあここに座って」
『う、うん・・・』
本当に大丈夫なのだろうかと不安になりながらも、ソファーに座った。
「計算お願いしてもいい?私書類作るから何かあったら言ってね。」
『こんなにあるの?』
量の多さに驚き、毎日これは大変だと実感した。
「あー、ナルトがいるー」
『イノちゃん。サクラちゃんの手伝いだよ』
「お前できんのかよ」
喜ぶイノと馬鹿にしたように尋ねるサスケ。
『計算だけなら出来る。』
大きな目でサスケを見上げるナルトに、彼は鼻で笑って席につく。
それぞれが作業を開始する中、一人だけペンの音が早いのがナルトだった。
「ナルト、終わった?」
『うん。電卓でもう一回確認する。』
暗算だけで計算をしていたナルトは、電卓を使うとスピードが落ちてサクラは苦笑する。
「あんたが暗算間違えた事あるの?」
『・・・でもテストとは違うから確認しないと駄目でしょ?』
「電卓なら私のが早いから、ナルトはこっちお願いできる?」
イノが肩をぽんと叩くと、パソコンで入力をする文章。
それなら大丈夫だと頷いて場所を交換した。
「・・・確かにするわ、花の匂い。」
ぽつりと呟いたイノの呟きはナルトには届かない。
一人増えただけで作業速度が速くなり、イノとサクラは表情を緩ませる。
生徒会の仕事ばかりで遊ぶ時間が無かったせいか、もしかしたら今日は早く帰れるかも、と淡い期待を抱いていた。
何時もの笑顔は無く真剣な眼差しでパソコンを打つナルト。
「早いわねぇ」
「おじいちゃんの手伝いで良くパソコン打つのよ、ナルトは。」
器用に動く両手と、上下する瞳。
ほんの数分でプリントする書類を打ち終えたら、ぐっと背伸びをした。
『できたよ?』
「じゃあ会長に渡して」
ん。と頷き印刷された書類を持ってシカマルの所へ向かう。
『確認お願いします。』
「・・・悪いな、手伝わせて」
書類を見ていたシカマルは顔を上げ渡されたのを受け取る。
『平気です。』
嫌な顔を浮かべず笑うと、ナルトは何かに気付く。
『・・・消しゴム落ちてる』
ころりと転がっている消しゴムを屈んで取り、机の上に置いた。
『サクラちゃん、区切りついた?』
「うん、もう少し。もしかしてお茶淹れてくれるの?」
『うん。それ終わったらサクラちゃん教えて』
ナルトは机に戻り使った物を片付け始める。
「計算バッチリだったわよー!」
電卓作業が終わったイノはブイサインをナルトに送る。
「ナルトの暗算凄いわねぇ」
『計算しか出来ないよ、俺』
数学が少し苦手なナルトは、苦笑を浮かべこたえた。
サクラから教わり皆の飲み物を用意して休憩を始めた。
「休憩とかいいわぁー」
「ナルトのお陰で助かったわ」
『今行事近いから皆大変だよね。』
一年生の行事、部活や委員会の活動費や嘆願書類等が多かった。
「人手足りないのよ。」
『なら今日は手伝えて良かったよ』
サクラとの会話を黙って聞いているのは、そうしていろと言われたからでナルトを引き込むつもりなサクラ。
「ほんと助かった、帰りとか遅い時あるし時々怖かったのよ。」
『・・・空き地の所?』
薄暗い場所で人通りが少なく、女の子の独り歩きは確かに怖いかも知れないと考えるナルト。
「たまには遊びたいし、宿題とか勉強とか睡眠とか・・・全部遅くなっちゃうし」
『昨日のサクラちゃん、疲れた顔してたよね。』
そうなのよ、とため息をついて俯くサクラ。
「ナルトみたいな人がいればいいのに・・・そうしたら皆余裕が出来るもの。」
『──・・・俺、手伝おうか?』
にやり、と俯いているサクラの口元は笑っていた。
「でもナルトだって遊びたいでしょ?少なくなるわよ」
『週末遊べばいいし、人手が足りないなら俺手伝うよ?』
「ナルト・・・っ」
俯いていたサクラは顔をあげ、にっこりとした表情を浮かべていた。
「じゃあ生徒会、入ってね。」
『・・・は?』
目を丸くして前に座るサクラを見遣るが、口端が引き攣る。
これ知ってる。
頭の中で呟いた。
「手伝うイコール生徒会よ、ナルト。」
『サクラちゃん、最初からコレだった?』
勿論。
サクラの表情は満面な笑顔を浮かべ、策に嵌まったナルトはがくりと頭を下げた。
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