NARUTO 十 始めてから数十分が進んだ頃、ナルトの手が止まる事が多くなった。 『先輩、どっちから?』 「・・・こっち。」 文章を読んでノートに書いた式に指をさすと、ナルトは頷くが頭を掻く。 『こっち?あれ、こんがらがる・・・』 「ナルト、こっちこい」 隣をさすと素直に彼の隣に座るが、違いの肩がくっつきそうな距離は初めてで、気付いた時には緊張してしまった。 「左辺を因数分解してみ」 『因数分解するの?』 シカマルの方をみれば顔も近い事に胸がどきり、としてしまう。 「そう、やってみ」 頬杖をついたままもう片方の指でノートをとんとんと叩く。 『・・・a>0のとき、-a≦x≦2a?』 「つぎは」 一つずつ解いていき、出来上がるとシカマルは頭を撫でた。 「できるじゃん」 『先輩がいなかったら、間違ってた。』 恥ずかしくて顔を向ける事が出来ず、ノートを見ながら返す。 そんなナルトをシカマルはただ微笑を浮かべて眺めていた事に、本人が気付くはずもなく この感情の変化にただただ戸惑っていた。 カカシの作ったプリントを見て、シカマルの眉はぐっ、と寄っていた。 「カカシのプリント、今まで正解してたのあるか?」 『・・・んー、なんか段々難しくなって間違いばっか』 しゅん、と落ち込んでしまったナルトの肩にぽん、と手を置くシカマル。 「だろうな、ややこしいのが多い」 『先輩分かるの?』 あぁ、と返しプリントを眺める姿にナルトはただじっ、と魅入ってしまう。 何時もと違う雰囲気だからだろうか。 「あいつ態とこんな問題作ってんのか。」 ぼそりと呟いた言葉に首を傾げるナルト。 プリントをテーブルに置いて、シカマルは促す。 「この式は先に何をすると思う」 『・・・不等を変える?』 それしか思い付かなかったが、どうやら違うとシカマルの首は左右に動く。 「カッコを外して移行すんだ。」 『・・・は?』 なにそれ、と大きな目を更に見開くナルト。 「だからややこしいんだ」 『あー・・・もうやだぁ』 テーブルの上に突っ伏して、彼の方へ顔を向ける。 『先輩は頭がいいって、本当なんだね。』 「な訳あるかよ」 羨ましくてシャープペンでつんつんと腕を突っつくが、頭を撫で回されてしまった。 『だって教え方とか上手だし、ゆっくりだし』 「それ、ただたんにナルトがある程度理解してるだけだろ」 でも一人では出来ていないだろう宿題とプリントは、間違いなくシカマルのお陰と思うナルト。 「移行したら次何する」 『両辺を−Tでわったら・・・X<2』 「正解。」 カカシのプリントで一問を5分もかからないで出来たのが初めてで、ナルトは破顔する。 『すげぇ嬉しい!』 「そうか」 それを見たシカマルはくすりと笑い、次へと進むがこれもややこしく、教わっていく。 次第に互いの肩がピタリとくっついていた事に気付いていたのは、シカマルだけだがこの距離から離れる事は無かった。 [前へ][次へ] [戻る] |