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NARUTO


運ばれてきた料理をペロリと平らげ、デザートまで綺麗に食べ終えた頃、子供達がトイレへと向かった。

『美味しかったー。シカマルありがとう、連れてきてくれて。』

「此処でゆっくり食べたのは初めてだ。」

接待が多く、シカマルも満足に食べたことが無かったが、今日はゆっくりと楽しい時間を過ごせれた、と。

『ヨリもチカも段々食べる量が増えてきたね。』

男の子の成長期が恐ろしいと感じてしまう。

「今日は朝からずっと動いてたのもあるしな。」

『俺はちょっと暇だった。』

むう、と唇を尖らせると自然な動きでシカマルは軽いキスをした。

『・・・っ!』

突然の事に顔を真っ赤にするナルトに、彼は悪戯な笑みを浮かべ頬を撫でる。

「まだ不貞腐れてんのか?」

『ずりい・・・ほんとずりい・・・っ』

耳元でそんな声出すなんて。

「夏になったらキャンプでもすっか?」

『する!します!』

九喇嘛も出して騒ぎたい!

目を輝かせるナルトにシカマルはくすくす笑っていると、二人が帰ってきた。

「お母さん」

『ん?ヨリどうした』

二人とも中に入ったはいいもののそこに突っ立ったままの姿で首を傾げる。


「今日はお母さんの日なんだ」

『それさ、どういう意味なのか聞いてもいい?』

さっぱりわからなかったんだ、と告げるとチカが1歩前へ出た。

「この月なんだ。」

『お母さん誕生日祝ってもらったよ?』

「違うよお母さん。」

チカとヨリの言葉を聞いても全く分からなくてシカマルを見ると、蟀谷を数回掻いて言葉にする。

「本当は俺だけだったんだかな、ちょっと増えた。」


この三人が何をしたいのか本当に分からない。

思い付く限りの記憶を探しても見当たらない。



ーー・・・一つ聞いてもいいか?



「お母さん、僕達は思ったんだ。」

「僕達はお父さんとお母さんの子供だから。」

『・・・・・・。』

やはり可笑しいと、思ってしまったんだろう。

嫌なことの一つが当たってしまい、腹の中が一気に冷えるのを感じるナルト。

「お母さんはとても悩んだと思う。」

「誰よりも考えて、悩んで、不安と戦ってきたと思うし、きっと今でもそうだと思ってるから。」


『思ってるって・・・ヨリなに言って・・・っ』

涙が出そうになってしまう。

聞かされてしまうのだろうか、それとも違う言葉を言われてしまうのだろうか。

不安ばかりが募っていると、シカマルがナルトの手を握った。

『・・・っ。』

「お母さん、僕達はね・・・」


がさり、と二人の背後から音がした。

「10月にお母さんのお腹の中に二つの小さな命が出来上がったんだ」

『なんでそれ・・・っ』

わり、と申し訳なさそうな顔を浮かべるシカマルの姿に、ナルトは堪えきれず涙がポロリと落ちる。

最終月経を一ヶ月目として数え、宿ったのは10月。

生まれたのは夏になろうとしていた六月に二つの産声があがった。


ーー・・・お前達はどう思ってるのかを。




「「僕達はお父さんとお母さんの子供で幸せだよ。」」


大きな花束が目の前に現れると、次から次へと涙があふれでた。

こんな幸せな事があるだろうか。

こんなにも幸せな気持ちで泣かせてくれるだなんて。

『ーー・・・ありがとう』


二人を抱き締めながらナルトは泣いたが、ヨリが口を開いた。

「今度はお父さんだよ。」

『・・・え?』

そう言えばさっき言ってたな、と思うがこれ以上の幸福は勘弁して貰いたい。

泣き崩れて仕舞いそうで、怖くなってしまう。

「いい加減、認めて貰わねえとって思ってたんだ。」


立ちあがると、シカマルはナルトを立たせた。

「一番大事なのをしていなかったからよ。」

『婚姻届けは出した。』

二人で出しに行ったのだから覚えているし、身内や仲間、関係者達での祝い事もした。

「忘れたか?お前、自分で要らないって言ってたの。」

『・・・使ってた抱き枕?』

あれ抱き心地良かったんだよな。シカマルと一緒に居られない時は何時も抱いて寝ていたのだから。

「抱き枕に負けたね」

「うん、やっぱそこはお母さんだよね。」

楽しそうに眺めるヨリとチカはクスクス笑う。


「無くすからやだって言ったろ。」

『ああ!分かった部屋のカギな!』

良く無くしたっけなー!泣いていた鴉がもう笑った、と言えてしまう程の変わり様に流石のシカマルも呆れてしまう。

「ーー・・・ナルト」

『・・・ん?』

そっと手を取りそれを口許へと持っていかれた。

「お前は言ったな。俺とヨリとチカと九喇嘛が傍に居ればそれだけで充分だって。」

『うん、充分。』

これ以上なにもいらない。

幸せの形があるのだから。

「けどよ、ナルトはヨリとチカの母親でもあり、九喇嘛の友であり、俺だけの伴侶だ。」

『うん。』

真剣な眼差しを向けるシカマルに、ナルトの背筋は更にぴん、としてしまう。

「お前は任務で無くすって良く言ってたが、その反面良く見てたよな。」

『・・・いや、俺は別に・・・』

ここでやっと分かったような反応を見せ始めたナルトの手を少しだけ強くシカマルは握りながら胸元へと降ろした。


「要らない訳ねえんだ。お前は俺を幸せにする奥さんなんだから、必要に決まってるだろ。」

『・・・っ。』

左手の薬指が微かに冷たいものが触れると、ナルトはまた涙を浮かべた。


あの時ヨリに聞かれていなければこれだけだったのだが、シカマルもナルトが色々な事に悩んでいるのを知っていた。

自分の事も、子供達の事も、シカマルの事も、九喇嘛の事も。

そして、本当は・・・


「ナルト、これからも俺の隣に居て欲しい。」

飾り気のないシンプルな言葉。

他人からすれば良く聞く言葉かも知れないが、それを告げるのは、共に歩んできたからこそだった。

辛いときも悲しくて苦しい時も、楽しいときも何時も一緒だった。


何時も、幼い頃からシカマルの姿があった。

そしてその背中を眺め、追い掛けた事も

何時しか抱いてはいけない気持ちを抱え悩み苦しんだ事

共に肩を並べ、手を取りあい愛を紡ぎ二つの宝物まで授かった。


形があるからそれでいいと思ってた。

大切な宝物があるのだからそれでいいと。

自分は男だから

男でありながらも妻であり母親でもある。

それを他人が見て、二人を言葉の暴力で傷つけられたくなかった。

言葉の暴力が一番痛いのを知っているからこそ、怖かった。

怖かった筈なのに、幸せな言葉を言われたら消し飛んでしまう。




『・・・これからも、末長く宜しくお願いします。』


左手の薬指に光る指輪を見たくても、涙で滲んでしまって良く見えなかった。


「ねえヨリ、お母さんは里で一番強い忍だけど泣き虫だよね」


「そうだねチカ。お母さんはお父さんと僕たちにはほんと弱いよね」


ニコニコと幸せな笑みを浮かべたまま抱き合う二人を眺めた双子達。


「けど良かったね。僕たちの気持ちが言えて。」

「まあ、普通同性でもどんなに願ったって出来ないのに、お母さんは本当に凄いと思うよ。」

純粋で無知なチカと違い、やはりヨリはシカマルと似て知識を吸収するのが早い。


「流石ボクたちのお母さんは里一番の意外性ナンバーワンなんだよ。」

「そうだね。」

くすくさ笑う息子達。



かさり、と花束の中にあるものが揺れた。


それに気付いたのは自宅に帰ってから。それを読んだナルトは遂に泣き崩れた。

















お母さんへ。


僕達は思うんだ。お母さんが里で一番幸福者なんだって。


これだけお父さんと僕達に愛されて

沢山の仲間達からにも愛されて。

沢山の人から羨ましがられてるの知らないよね。

10月はお母さんが生まれて、九喇嘛と一緒になって、僕達はこの世に命が出来た日。


そしてやっとお父さんがお母さんに結婚指輪を渡せれた日。


10月は、僕達家族にとって大切な月。

ねえお母さん

これからも沢山の大切な何かを作っていこうね。


お母さん、お父さんと一緒になってくれてありがとう。

僕達は二人の子供で良かったって思ってるよ。

僕たちを産んでくれてありがとう。

いつも沢山の幸せをありがとう。

これからも沢山の幸せを感じていこうね。


ヨリとチカより。




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あきゅろす。
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