NARUTO
五
容易く担がれてしまったナルトは、シカマルが珍しく声を荒らげた事に驚くが自分が今どういう状況なのか理解するのに少し遅れた。
「相変わらず軽い身体してんのな。」
『・・・いやいやいやいや!ひ弱そうなシカマルが何軽々と担いでんだよ!』
驚いた所がそっちだとはナルトもナルトなのだが、シカマルの姿勢の悪さや普段からの生活がだらけているせいで非力に思われたり見えたりする。男を軽々と担ぎ歩くのだから若者では相当なもの。
しかも担ぎ方もしっかりとナルトの手を自由に出来ないよう自分よりも大きな手でひと纏めにされていた。
「別に俺はひ弱じゃねえし。」
そう見えるだけだろうが。
何時もと変わらない声で返答するシカマルにナルトはほっとしてしまう。
けれど彼が向かっている先が玄関ではなく、どちらかと言えば人気の無い所へ向かっているのが分かった。
『てかさ、いい加減降ろしてくんない?』
「逃げなきゃ降ろしてやる。」
そうか。まあそうだよな。大抵の人はそう言うだろう。
冷静に考えてナルトは言葉にした。
『逃げないから。』
「そうか。あと蹴飛ばすのも投げ飛ばすのも駄目だぞ。」
『・・・・・・。』
え、なんでバレてんの?
あれ、俺逃げないって言っちゃったんですけど。
シカマルにそう言われると思ってもなかったナルトの頭は少しだけ混乱してしまう。
それを上乗せするように手の拘束も取れた。
「どうせお前の事だから何かしらするだろうとはおもってたが・・・する気だったんだな。」
『いや、そのー・・・なんと言うか・・・冷静に話せるかーっ!』
担ぎ歩くシカマルの肩にグッと力を入れて無理やり飛び降りようともがき始めるナルト。
冷静になればなるほどシカマルに言ってしまった言葉が恥ずかしくて、悲しくて仕方がない。
「暴れんなっつーの!」
『無理無理無理無理っ!』
シカマルの言葉や行動ががショックすぎて、自分の気持ちを吐露してしまったナルトは逃げたくて仕方がない。
好きになってしまった自分が悪い。
シカマルに好意を抱き、その事に気付かれ距離を置かれていた事は分かってた。
分かってはいたけど、諦める為にキスをされても虚しいだけ。
自分も、シカマルには苦痛を与えて何をやってるんだ。
「お前は俺の話を聞くって事が出来ねえのか!」
『出来るか!そんなもん今年からシカマルの態度で分かってるじゃん!』
距離を置かれ、会話も減り遊ぶ事すらしなくなった。
会話をしても不機嫌そうな態度で、気付かない筈がない。
「お前は・・・」
空いている片手で何処かのドアを開けて中へと入っていく。
逃げ場か無くなってしまう事の焦りからか、ナルトは最後の悪足掻きをしようとシカマルの脇腹に一発入れようと動かした。
「だから・・・」
『ーー・・・っ?!』
ぐるん、と世界が反転した。
『・・・へ?』
なにが起きた?
頭が真っ白で、大きな瞳は驚きで更に大きくなり、その世界には自分を見下ろすシカマルの姿。
けれど光の陰影のせいで彼がどんな表情をしているのかかはっきりしない。
「お前がやりそうな事なんざお見通し過ぎんだ。」
なんなんだ今日は。
俺の知らないシカマル祭りなのか?
声を荒らげた事
軽々と担ぎ上げ、普通に歩いてた事
自分の行動を読んで勢いすら付けずに降ろされた事。
そして
今のシカマルがどんな顔をしているのかわからない事。
人は見掛けによらないとは本当にこの事だ。
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