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NARUTO
知りたくなかった

夢なら良かった。

夢なら、温もりも、感触も解らないから。

あの日、暁の連中があんな事さえしなければ、ただの想像だけで済んだのに。


姿も、声も同じ。

優しいのも、怒りっぽい所も、包み込んでくれたあの温もりもすらも同じだった。

現実に戻った時、それが悲しくて

見上げた家は暖かな光はなくて、何時もと同じ真っ暗でひんやりとした室内。

ただいま

その言葉に返ってくる言葉も、声も無い。

おかえり

その言葉が、声が聴きたかった。

けれどそれが叶ってしまった時、無償に嬉しくて、悲しくて、苦しくもなった。

だってその世界は現実じゃない。

自分の両親なのに、呼んでくれる名前は全く違う名前。

慣れてはいけないと思っていたけど、自分の欲しかったもの、憧れていたものには勝てなくて


楽しくて、幸せな時間だったのは確かな事。

だってそれは現実にはならないのだから。

どんなに願っても、叶う事が無かった。


欲しくて
欲しくて
他人が羨ましかった。


自分を包み込んでくれる人なんていない。

本当は包まれたい。

本当は無償の愛を知りたい。

誰かから愛される温もりを――・・・



『――・・・巻いたか?』

暗闇の中、ナルトは里の中でとある者から逃げ回っていた。


『くそ、あっちの世界の感覚が抜けてねーのか・・・』

全く正反対の仲間達に驚いたのは間違いないが、何よりナルトが驚いたのが、あのシカマルが誰がどう見てもバカ、と言ってしまう変わりよう。

記憶が強いまま現実に戻ってきたナルトは、一人考えながら歩いていると、そのままシカマルと出会ってしまい反応がうまく出来なかった。

気持ちの整理が付いていないまま、ナルトはシカマルから逃げてしまった。

掴まりたくない。

掴まって、理由なんて聞かれたくない。

泣いていた理由なんて、誰がいうものか。


『今日はどっかで野宿でもすっか』

家で待ち伏せされてる可能性はあるが、もう真夜中。

寝る事が好きなシカマルが睡眠時間を削ってまでナルトを探す筈はない。

けれどあのシカマルならなにか仕掛けていそうで気が抜けない。

『いい木ねーかなー?』

ナルトは寝床となる大樹を森の中で見上げながら歩いて、ナルトは丁度いい木を見つけて幹に触れていた時、ふわりと風が背後から拭いてきた。

『・・・まじか』

獣に気付かれでもしたのか。

ナルトは眉間に軽い皺を寄せながらどうすべきか考え、身体の向きを変えて姿を探す。

このまっ暗な森の中、有利なのは勿論夜行性動物。

どこから来ても良いようにナルトはポケットに入れてあるクナイを取ろうとした。

『・・・っ!』

それよりも早くナルトの顔の横に何かが掠めた。

月の光は雲で隠れて頼りにならない。

襲ってくる気配すらない。

ナルトはこれが一体何なのかが分からない。

「ここがお前の今日の寝床、か?」

『・・・は?』

聞きなっれた耳触りのいい腰にくる声は、ナルトの腹の中を熱くさせる。

「お前、簡単に泣いたりしねえからな。」

『馬鹿か、あれは欠伸だろうが。俺が泣くなんてあり得ねえだろ。』

ナルトなりの虚勢はシカマルに通じるのだろうか。

けれど、その強がりがナルトを支えてくれた部分もある。

雲がゆっくりと月から離れると、明るくなった視界に目を丸くしてしまう。

『おっ、おま・・・っ』

「――・・・あ?」

ナルトは耐え切れなくて口許に手を当て、ぐっと堪えてシカマルを睨みつけた。

『おっまえ・・・っ、男に壁ドンなんてすんじゃねーよっ!!』

「しないとお前はにげるだろ。」

『だとしてもすんなっ!!』

今女子達に人気の壁ドン。

それを自分がされて、ナルトは恥ずかしくて仕方が無い。

そして、閉じ込めていたものが出てきてしまいそうで怖かった。

『お前寝てろよ、こんな所に来ねえで寝てればいいだろうが!!』

こんな事されれば誰だって・・・

「気になったんだから仕方ねーだろ。」

よくもそんな台詞

ナルトは奥歯を噛み締めた。





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あきゅろす。
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