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NARUTO
二  

入った部屋は奈良が使う部屋で、和の造りなのにこの中はモダンでお洒落だった。

『あれだね、やっぱりドラマハウスに使うべきだと思う。』

「なんだそれ。」

手に持っていた荷物をテーブルの上に置いてソファーに座る奈良。

「ナルト、お前浴衣着せてやるからな」

『浴衣!?奈良さんもきるんでしょ?』

期待を込めた眼差しを裏切るように、彼はヤダ、ときっぱり返した。

『俺だけ浴衣とかヤダし・・・俺奈良さんの見たい!』

だめ?首を無意識に傾げて尋ねるナルトに、奈良は考えて口端をあげる。

「見たいか?」

『奈良さん似合いそうだもん!』

だから見たい!素直な言葉に奈良は簡単に了承した。


奈良が用意してくれた浴衣は、白地に墨で描かれたような花柄模様で帯は濃紺色の枡模様。

手慣れた手つきでナルトを着つけていく奈良。こんな一面を見れて、ナルトは惚れてしまう。


着付けされたナルトは奈良が終わるのを待っていると、奈良が帯が無い、と言って取りに向かった。

部屋の窓から見える景色を眺めて、ナルトは中庭を見ると、池が外にも繋がっていて、どこかの室内にも繋がっている事が分かる。

面白い作りに探究心が出てしまうが、きっと楽しくて仕方が無いだろう。


山から見える星空はどれほどか。

山で聞こえる鳥の囀りはどんな音か。

ナルトは目を閉じて鳥や虫たちの声を聴いた。

都会では中々聞く事が出来なくなった自然の音色が心地よくて、思わず眠ってしまいそうになる。

奈良が帯を付けて浴衣を着た姿に、ナルトは見惚れ瞬きすらも忘れてしまった.


『イケメンは何を着ても似合うって、本当なんだなあ・・・』

「なに言ってんだ。浴衣なんて服選びと同じだろうが・・・」

言われてみればそうだが、奈良の場合は幼いころから着ているだけあって、浴衣と帯の合わせ方が上手だとナルトは感心する。

空の色は茜色をしていて、遠くから聞こえる太鼓の音と、笛の音色。

『・・・・・・。』

幼い頃聞いた覚えがあってナルトは耳を澄ましてみても上手く聞き取れなかった。

『奈良さん、この音色って祭りの方からだよね?』

「ああ。ここは昔から変わらずだからあっちとはずいぶん違うだろ?」


『ううん、なんか聞き覚えがあるなって思ったから』

恐らくテレビとかでみたものと似ているからそう感じるんだろうと、ナルトは深く考えなかった。

草履を履いて、二人は門を潜ると、人影があった。

「おー、シカマル!やっぱ戻って来たか」

「久しぶりだな、キバ」

奈良より数センチ低い男性が奈良に話しかけてきて、親しそうに話していると、ナルトに視線を向けた時、ナルトもキバをじっと見てしまう。

「お前・・・ついに日本人に飽きて外人に手を伸ばしたのかよ!」

よーやるよなー!ケタケタ笑いながら奈良の肩を叩く彼と、聞いてしまったナルトはキバから視線を奈良へと向ける。

「キバ、お前もう黙れ・・・」

「んだよ、本当の事だろうが」

『奈良さん、そんなに遊んでたんですね』

にこりと笑みを浮かべるナルトだが、目はちっとも笑っていなく、寧ろ迫力があった。

「あ?・・・お前、男か?」

『はい、奈良さんに家庭教師してもらってます。』

意外な顔でナルトを見るキバは、寧ろ興味ありげな顔をしていて、奈良が溜息を吐く。

「シカマル!お前女に飽きて遂におと・・・ぐふっ!」

「黙れ犬男・・・っ」

ごすっ、とキバの頭に拳骨をいれる奈良。

彼は蹲り、頭を摩りナルトは黙って奈良の背中を眺める。

『ついに男に走った、と・・・』

「お前まで話に乗るなってーの・・・」

がんなりした顔を浮かべて返す奈良だが、誰だってそんな話を聞いてしまえば自分との関係を疑ってしまう。

本当に奈良は自分の事が好きなのだろうか、と。

「つーか・・・シカマルがそうやって誰か連れて来るの初めてじゃねえの?」

「だからお前は喋るな。黙って呼吸だけしてればいいんだよ。」

辛辣な言葉をキバに浴びせ、奈良はナルトの手を取って歩き出す。

『奈良さん、あの人ほったらかしにしたら・・・』

「いーんだよ、死ぬ訳でもねえから」

背後からキバの、ひでー!と叫ぶ声が耳に届いた。


『俺が此処に来て良かったの?』

「別に、知り合いと会えば何か言われるだろうからな・・・」

昔の自分を知られても良かったのだろうか。

彼の言葉を思い出すと、ならは随分遊んでいたのだろう、とナルトは考える。

どんな綺麗な人が、この人の隣にいて

どんな綺麗な人が、この人の身体に触れて

『遊びまくってたんだね、奈良さんは』

「あのなあ・・・」

立ち止まって振り返ると、ナルトは俯いていて彼は眉間の皺が寄る。

「気にしたか?」

『無理でない、気にならないのって。多少は気になるけどさ・・・俺は男だから尚更怖いと思うけど。』

異性じゃないから。

どんなに望んでも、異性に勝る所なんて無いのだから。

『でもさ、過去なんて見れないし戻れない。塗り絵みたいに塗り替えることも出来ないよ・・・出来なけど、過去の奈良さんと会ってたら俺は此処に居なかったと思う。』

誰も連れて来ていないのなら、此処は彼にとって特別な場所だったのかも知れない。


そんな場所に連れて来てもらえたと言う事は、少し自分が過去の人達より勝っているのかもしれない。

「おまえなあ・・・」

『それに年齢も違うから知り合う事なんて無かったと思う。』


忘れてはいけないのは、あの海の日に奈良がナルトに告げた言葉。

――Never in all my life have I been so strongly attracted to any man.

その言葉がナルトの頭の中に浮上してきた。


「もう少し突っ込んでくるもんじゃねえの?」

『過去の事聞いても変えられないのに、ムカつく話を聞き返してどうすんのさ。』

惨めなだけじゃん。

自分の知らない奈良の事を聞いても、虚しさしかない。

知る機会はいくらでもあるのだから。

『もういいから早くお祭り行こう』

「腹減ったか?」

減ったよ。頬を膨らまして顔をやっとあげると、ナルトは目を丸くする。

『・・・なに困った顔してんのさ』

手で口許を覆いながら眉間に寄った皺。

ナルトはその手に触れて離した。

『奈良さんが気にしてる?』

「つーか・・・お前の反応が予想外過ぎて」

そうだったのか。

ナルトは納得顔を浮かべて、また俯いて言葉にする。

『人が気にしないよう振る舞ってれば・・・何さ。あれか、どんな人が相手だったんだ、とか、俺とは遊びでからかってるだけんじゃないのかって聞けば奈良さんは満足する訳?』

震える声で言葉にするナルトに、奈良はナルトの頬に触れる。

「そうじゃねえって、ただお前・・・聞き分け良いようにしてるだけじゃねえの?」

『しないと面倒臭いじゃん!あんたみたいな人は面倒な事に首なんて突っ込みたくないだろうし、関わりたくもないだろ!』

手を払いのけて怒鳴るナルトに姿に、奈良は何処か安心してしまうが、告がれた言葉が当たっていて驚いてしまった。

「・・・良く見てたな」

『俺は奈良さんの周りにいる人と違うから、手探りしかないじゃん・・・』

出会う前は、言わなくても聞かれなくても相手が知っていた。

付き合っても、どこか冷めている自分。

前の相手とはどれだけ続いたかを競うように

気持ちを聞かれると、その関係そのものに醒めてしまう。

誰かを想うことも無く、こういう関係が続いて行くんだろうと、思っていた。

手探りで探して、自分の事を理解してくれようとしている事が、奈良は嬉しく感じた。

知らないからこそ、相手を見て考えてくれる。

奈良にはそう言う人がいなかった。

どこかから出た噂話しや、誰かか聞いた事ばかりで

知ろうとはしなかった。

『どうせ奈良さんと歩いてたらさっきみたいな事ばっかありそうだから・・・』

そうだろうな。

奈良は此処に連れてきたのを後悔した。

ただ純粋にナルトが好きな自然を見せたかっただけの事で、自分の過去の事なんて考えてもいなかった。


『また誰かに言われたら俺・・・っ』

我慢なんて出来そうにもない。

ナルトは握り拳を作って、足に力を入れた。

『一人で回って来るからっ!!』

だっ、と奈良の返答なんて聞きもせずナルトは走り出した。

「・・・あのバカ」

泣きながら言ってんじゃねえよ。

ナルトが立っていた地面を見て奈良はそう呟いた。

「――・・・」

昔なら、気にもかけないでそのままどこかへ歩いてた。

探そうだなんて思った事なんて一度も無い。

探す事が面倒だから。

勝手に寄って来たのは向こうで、感情なんてものはないから。

「・・・シカマル君」

「殺すぞ、駄犬。」

控えめな声で声を掛けたのはキバ。

ナルトにはまだ見せたことの無い顔と声を彼に向けると、怯えて木に抱きつく。


「・・・居ないってことはまさかお前あの子と付き合ってんのか?」

「だったらなんだ」

かきん、と金属の音を出してジッポの蓋が開き、煙草に火を点ける。

紫煙を吐きだして奈良はナルトが走って行った方へ視線を向けた。

「こういう時なんだろうな、お前が言ってたいつか後悔するって言うの・・・」

「後悔してんのか?」

まあな。奈良の返答にキバは目を丸くさせて笑みが浮かんでくる。

幼馴染だからこそキバは奈良の事がずっと気になっていた。

「そんで揉めたか?」

「いや、俺は面倒嫌いだからそういう話はいやだろってのと、一緒に居るとまた聞かされそうだから一人で回るとよ。」

あちゃー。額を抑えてキバは落ち込む。

自分の発言が原因なのは知っているが、付き合っているなら前もって言ってくれよ、と心の中で愚痴った。

「追いかけるの、面倒だからどっかで暇つぶしでもすんのか?」

「しねえよ、あいつ捕まえて花火見ねえとなんねーから。」

予想外の言葉に、キバは更に驚く。

自分の知りうる中で、追いかけた事は無い。

歩いてはぐれても、探す事なんてしなかったのに、今目の前にいる男は探そうとしているのだ。

その変化に、キバは嬉しかった。




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あきゅろす。
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