NARUTO
50000hit リクエスト 笛の音色 R18 現シカナル
*このお話は微熱は誰のせい、の続編となっております。
シカマル 家庭教師 ナルト その生徒。
「今から出かけるから泊るって言っとけ」
『――はい?』
その電話は行き成りだった。
その言葉は既に決定されていて、ナルトは通話を切った途端、ベッドから起き上がって服を脱ぎ始めた。
奈良シカマルはナルトの家庭教師であり、恋人。
大学三年生で、もう大人の仲間入りをしている彼は、見た目も頭の良さも備わっていて、時々この人と付き合っていいものなのか考えてしまう時がある。
付き合ってから気付いた事といえば、面倒くさがりが、どうして家庭教師なんてしち面倒なものをしたのかが謎。
そしてその他に――・・・
『出かけるって、どこ?』
何か買いたい物がある。だなんて昨日は聞いていないし、どこか行きたいと聞いていない。
メールが鳴って着いた、と知れば外へと出たがぴしりと固まる。
『・・・どこのモデルだよ』
「あ?」
車から降りて煙草を吸っている奈良の格好は、シンプルな黒のブイネックシャツに、クロップドパンツ。胸元にはシルバーのネックレスが一つだけなのに、随分と違う人に見えた。
ナルトは横縞の七分丈シャツに、紺色のカーゴパンツ
とワンショルダーバックを肩から掛けていた。
「濃紺もいいな・・・」
『?濃紺?』
じっ、とナルトの姿を見てひとり呟く奈良に首を傾げるナルト。煙草を消すと二人は奈良の車、新車の乗って走り出す。
海に行ったあの日から直ぐ、奈良はこのワンボックスの車を購入したのはつい最近の話。
床は勿論フローリングで、後ろのシートは倒したまま。
と言うのは、届いた日にドライブに連れて行ってくれたのはいいが、人気のない所でそのまま後ろの席で頂かれた。
だから見る度にナルトはあの日の事を思い出してしまう。クーラーが効いていても、重なり合った熱は熱くて頭がクラクラした。
「なあナルト」
『・・・ん?』
いいとこ連れてってやるよ。
前を見ながら告げる奈良。
運転する姿を見るだけでこの胸のときめきは何なのだろうか。
『買い物するの?』
「あ?そんなのしねえよ」
なんだその呼び出し方は。
「ちゃんと泊まるって言っておいたか?」
『うん、言っておいた。』
両親も奈良の家庭教師ぶりに喜び、継続を望んだのはいいのだが、かなり信用している。
どこかに行ってもなにも言わない。
遅くなっても何も言わない。
その分奈良がしっかりとナルトの勉強を教えてくれているのを知っているから。
夏休みになった今では奈良の家で止まって勉強と言っても何も疑われない。
「ただちょっと遠くに行くから先に飯でも食うか?」
『いいよ、コンビニのおにぎりで。』
遠くならその方がいい。彼に告げると頭を撫でられて、嬉しい気持ちを顔に出さないようにした。
奈良にそうされるのは嫌いではない。奈良に触れられるなら、何処を触れられても嬉しいと、身体がナルトに訴えてくる。
都会から離れて行き、景色は緑が多くなっていきコンビニで買ったおにぎりを食べ始める。
運転している奈良の分はナルトが包装を開けて食べやすいようにしてから渡した。
『でも何処に行くの?』
「あっちだと人混みだからいやなんだよ。」
なんの人混みだろうか。主語を言わない奈良に顔を向けると、頬を一撫でされた。
そういう何気ない接触は、ナルトの胸をトクリト打たせる。
「花火大会、この前見たいって言ってたろ」
『花火大会・・・ああっ!!』
先週家庭教師の時、学校からもらったプリントにそれが入っていて、ナルトは行ってみたいな、と呟いていた。
けれどそこは兎に角人が凄くて、ナルトは考えただけでげんなりもした。
『・・・あるの?』
「あっちよりは規模でかく無いが・・・まあ、楽しみにしとけ。」
奈良の言葉が嬉しくて笑顔を浮かべて彼を見た。
『奈良さんありがとう!!』
「どういたしまして」
視線をナルトに向け瞳で笑う奈良。ナルトは楽しみなのか笑みが浮かんでいた。
暫く車は走り、高い建物も見えなくなって、畑がちらほらみえたりする景色に、ナルトの目は癒される。
『俺川あったら絶対遊んでるなー・・・』
「流されて溺れるんじゃね?」
『・・・浮き輪があります。』
川遊びで浮き輪かよ。
奈良はからから笑い、ナルトは頬を膨らませる。
浮き輪を使えば、何処までも流されて帰れなくなっしまうんじゃないか、と思ったから。
「まあ、紐でも付けておけば心配ねえだろ。」
『なんか信用できない』
そんな会話をしながら奈良の車が止ったのは、門を潜って大きな旅館ような家。
『・・・誰の家?』
「俺んち。」
なんですと!?言いたげな目が奈良を見て、頭をポンポンと叩かれる。
『奈良さん・・・世界遺産にならないの?』
「それは行き過ぎじゃね?」
『だって見るからに歴史ありそうじゃん!なんか釜戸とかありそうだし!凄いじゃん、ずっと見守ってきたなんてさ!』
車の窓から見える外観を食い入るように眺めるナルトは感慨の声を零す。
『薪風呂ありそー・・・』
「普通そこは部屋がどれくらいだとか、広さがどうとかじゃねえの?」
シートベルトを外しながらナルトに尋ねると、振り向く事もせず淡々とした声で返した。
『そんなの中に入ったら分かるし・・・』
釜戸とか薪風呂も同じだろ。
奈良は心の中で突っ込みを入れて、外観を眺めたままでいるナルトのシートベルトを外した。
「いつまで見てんだ、出ればいくらでも見れんだろ」
『・・・そっか』
えへへ、と笑いながら外に出て、ナルトは胸いっぱい空気を吸い込んだ。
『あー・・・空気違う。綺麗だね!』
「そうか?」
空が高くて綺麗な青空に、鳥の鳴き声が良く聞こえる。
蝉の鳴く声も、風で揺れる葉っぱの音も、ナルトにはたまらなく嬉しかった。
『花火より探索したい!』
「・・・は?」
いきなり何言ってんだ。
意外な言葉に奈良は驚いてナルトを見ると、誰がみても楽しんでいる顔を浮かべていた。
「なに言ってんだ、屋台で綿あめ食うんだろ?」
『たべたいけど・・・遊びたい気持ちも・・・でも暑いからまずは涼まして!!』
何を言っても、熱さには弱いナルト。
中庭を歩いて、家の玄関引き戸を開けると御影石で出来た土間があり、広く綺麗に磨かれた板の間。
それを見た途端、ナルトは奈良の服を軽く引っ張った。
『これあれだ、ドラマで使う家みたい!』
「言う言葉がほんと・・・」
おもしれえ。くっくっと笑う奈良はどこか新鮮さを感じていた。
『お邪魔します』
中に続くドアを開けて廊下に出ると、窓から中庭が見えて、ナルトは目を丸くする。
『俺中庭って初めて見た・・・』
「後でみるか?」
見たい!好奇心旺盛な眼差しは奈良を笑わせて、和ませてくれる。
高校二年生でも、中身はまだ少年の心が残ったまま。
『・・・てか家行くなら言ってよ、手ぶらで来ちゃったじゃん』
「あ?誰も居ないから安心しろ」
けろっと言葉を返されて、ナルトは目をパチクリさせる。
「親はもうとっくに都心に居るし、此処は避暑地として残してあるから。」
『・・・奈良さんが何者かだなんて知りたくねえな』
知ってしまったら、何かが変わってしまったり、見たくないものまで見てしまいそうで。
「そこは知りたがる所じゃね?」
『そういうもんなの?別にいいじゃん。奈良さんが誰だろうとも、何時かは知るかもしれないし。それに、知らない事がいい事もあるからさ。』
知りたくも無かったことが、出来るのかもしれない。
聞きたくもない事を、聞くのかもしれない。
耳を塞いで、世界までも真っ暗にしたくてたまらない事だって
『・・・ぬ?』
腰に手が回って抱き寄せられた事にナルトは彼を見上げると、肩に顔を埋めていた。
「・・・お前で良かった」
『なにが?』
なんでもねえよ。ちゅっ、と額にキスをされて手を握られ彼は歩き、ナルトは着いて行った。
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