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NARUTO
九 

何度か誰かの声が聞こえて、誰かが腕に触れたのを感じた。

けど、身体が動いてくれなくて、眠たくて直ぐに意識が遠くなった。


はっきりと意識が戻ったのは、空が夕焼け空に変わった頃。

長く寝ていたのにもかかわらず、頭はスッキリとしていて身体も軽く腹の痛みが余り痛くない。

『あー・・・倒れたのか。』

我慢出来なかったんだな、おれ。

額に手を当てて俯いて溜息を吐いた。

あんな子供みたいな事をして何してるんだろう。

それでもナルトにすれば堪えていた方で、奈良が黒森にそう告げていた事に何より腹が立った。

収まっていたイライラがまた生まれてくると、ナルトは布団を強く握りしめる。

『・・・むかつく』

もっと机変形させてやれば良かった。

もう終わりそうな点滴を自分で抜いて片づけると、若干のふらつきを感じながらナルトは処置室から出た。

「ちょっと渦巻先生なに勝手に起きて・・・あ!点滴勝手に外したらだめですよ!」

直ぐに看護師に見つかってナルトは怒られてしまった。苦笑を浮かべると、聞きつけた他の看護師にも同じ事を言われてしまう。

『すみませんでした、自己管理が出来ていなくて。』

詰所に戻って直ぐに頭を下げると、誰もナルトを責める者はいなかった。

「もー滅多に表情崩さない奈良先生が慌ててたんですからね!」

「しかもストレッチャー待たずに先生を抱き上げて運んだんですから!」

もー凄かったわよねー。ナルトの体調よりも、奈良の意外な行動に看護師達は興奮していて、ナルトは信じられない顔を浮かべる。

奈良さんが俺を運んだのか?

「全部奈良先生が処置してくれて、疲れで胃炎になってたんでしょう?」

最近体調悪かったものね。

だとしても、ナルトはいま彼に会いたいと思わなかった。

あの二人のせいで自分はこんな痛い思いをしたのだから。

「なんだかんだで渦巻先生気に入られてるってのが再確認できたし」

『それは気のせいじゃないですか?』

そんな事はないと言うが、看護師はそんな訳ないじゃない!とナルトの肩をバシバシ叩く。

「奈良先生って、研修医にでもそう容易く叩いたりしないし自分から声なんて余り掛けないもの。」

そうだったか?

研修時代から奈良に叩かれたりしていたし、飽きれた顔で髪の毛の事や患者の事を言われた事がある。

それは他愛のない会話でも、話しかけられた事も。

「食事しに行った事、ある?」

『はい、何度かありますけど・・・』

きょとんとした顔を向けると、誰もが口をそろえて言った。

それ、渦巻先生だけだわ、と。

奈良は親しい者意外といかないと看護師達は知っているし、看護師に誘われてもそれは同じ。

だからナルトは彼のお気に入りだと誰もが言う。

しかも奈良は若くして小児外科医長であり、警戒心は強い。そう身の内を明かさず線を引いていると。

ナルトは聞いた言葉が信じられなくて終始驚いたままで、その日の仕事が終わった。

とぼとぼ歩きながらマンションに向かっている間はずっと看護師達の言葉がぐるぐる回る。

(だってそんなの俺にはわかんないって・・・)

研修当時は確かに無愛想だったが、暫くすれば注射が苦手なことを知られて言われるようになり、入院患者に髪の毛を弄られて突っ込まれるようになった。

『なんかそれって・・・』

随分前から俺は気に入られてたんじゃないのか

そんな身勝手な、思い違いな言葉が頭の中に浮かんできた。

そう思うと胸が熱くなってきてしまうが、ナルトは首を振って考えを飛ばす。

『そんなんで俺は許さないし。』

いくら好きな相手でも、楽しむ為に自分が使われたとなればいい迷惑にしか過ぎない。

『・・・は?』

エレベーターを降りて部屋の中に入ると、灯が付いていてさあ、と身体が冷えるのを感じる。

鍵を持って居るのは奈良しかいないのだから。


冷静を保ちながらリビングに向かうと、ソファーで横になっている奈良の姿があったが反応が無い。

『奈良さん何してんの』

ソファーに向かいながら声を掛けても反応はなくて、覗き込んだら瞼が閉じていた。

ナルトははじっ、と彼の整った寝顔を眺めて額にデコピンを食らわせる。

『俺もっといてーし。また痛み始めて来たし。』

今度は頬っぺた抓ってやる。

頬に伸ばすと閉じていた瞼は開かれる。

「そこは普通優しく起こす所なんじゃねえの?」

『煩いですよ、何してんですか。』

お前待ってた。

たったそれだけの言葉に、不覚にも胸がときめいてしまうのだから、どうしようもない。

『あ、運んでくれてありがとうございました。』

「ナルト」

ちょいちょい、と手招きされて普段なら躊躇いなくいくのだが、今回ばかりは躊躇ってしまった。

あんな事をしたのがどうも気になってしまって。

「はやく来い。」

『や、です。』

今は素直になんてなれなくて、逆に奈良と距離を取ろうと身体が後ろへ引いてしまう。

「お前から素直が無くなったらなに残んだ」

『俺は犬じゃなです。』

何時でも素直だと思うな、と感じながら奈良に言葉を返すと彼はナルトの腰を掴む。


「お前、俺に看護師の事言ったろ、そのままお前に返してやる。」

『・・・なんでですか?』

どうして返されないといけないんだ。

「俺よりお前の方が触られてるだろうが。しかも見舞いに来た奴にまで。」

『俺の場合は友達感覚でしょうけど、奈良さんの場合は恋愛感情入りすぎてる人が多いです。』

奈良を見る目がそうだと言っている。

見ているだけでもその視線には熱を孕んでいる眼差しを。

「自分の事は本当に無頓着だな、見舞いに来た奴がお前目的で来てる事知らないだろ。」

『それは患者に失礼ですよ。』

見舞いでは無く自分を目的としているのなら。

「色々だが、お前だってそうなんだよ。」

『だからって、黒森君にあんな事言うんですか?』

触れてもいいだなんて。

好いている相手がそんな事を言った事がナルトにはショック過ぎて胸が痛い。

「それは悪かった。もう終わらせたかったからああ言えばあいつはその話に乗るだろ。」

『俺がどうなっても良かったんですか?』

「そうなる前に、お前が絶対切れることを踏まえて言った。」

なんなんだ、この人。どうしてそこまで言い切れるのか、考えつくのか不思議で仕方が無い。

ぐっ、と腰を強くひいてナルトを抱き寄せ、奈良はナルトの首筋に口付ける。

「どこ触られた?」

『・・・言いたくない。』

不貞腐れた声で返すナルトに、奈良の瞳は鋭くなった事に気付かない。

たとえ服の上からでも、奈良に言いたくなかった。

首に腕が回って引き寄せられると唇が重なる。

「――キスでもされたか?」

『されてないです。』

じゃあ何処触られたんだよ。

手をシャツの中に忍ばせて囁き声で告げると、ナルトはまさか、と感じる。

言わなければ間違いなくすべてを触り、言えばそこをしつこく責められる事に。

もし言葉にしてしまったらどうなるのか。

それは間違いなく苦しみの中に快楽がある事に冷や汗が浮んでくる。奈良はナルトの身体を知りつくしているのだから。




『や、だ・・・奈良さん手、どけて・・・っ』


「ここしかねえだろ、あいつが触る所なんて」

どうして決定されているんだ。ナルトの性器に触れる彼を睨んでみても意味が無い。

「触られて、感じたか・・・?」

『そんな事ないって、奈良さん何言って・・・っん!』

ぎゅっ、と握られた性器。奈良は口端を釣り上げると言葉にする。

「服の上からでもこうなってんのに、無いって言うのか?」

『だからそれは奈良さんが触ってるからでしょ!』

好いている相手に触れられているのだから、身体だって反応してしまう。

あの時は気持ちが悪くて、いやで仕方が無かった。

奈良以外の人間に、触れられたくない、と素直にかんじたのだから。



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あきゅろす。
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