NARUTO
八
奈良に胃カメラをしてもらった日は、それはそれは疲れた顔を浮かべるナルトの姿。
当然心配されたが、胃が痛くてあまり寝付けれなかった、と言うしかなかった。
ナルトは鼻から胃カメラを入れてもらい、カメラを見ると胃の中が所々赤くなっているのが分かる。
「急性ストレス性胃炎だな」
『・・・・・・。』
簡単に言わないでくれ。憎しみを込めて彼の腿を抓ってみたが、鼻を鳴らして笑うだけ。
「これはリラックスするのが一番いいから、今日からたっぷり俺が癒してやる。」
一人の方が癒される!いや、でもそれは寂しい。
だなんてナルトは絶対にいう気はない。
薬を処方されて、ナルトは詰所に戻ろうとした時、ぐん、と腕を引かれてしまった。
『・・・っ、てえ・・・』
だれだよ、と顔を上げたら黒森だったことに驚く。
『・・・なにしてくれてんの』
「奈良先生がいったんですよ、服の上なら触ってもいいって。」
あんのポニー頭め。
出そうになる言葉を堪えてナルトは黒森をみると、笑みを浮かべてナルトを抱きしめた。
『ふざけ・・・っ』
「へえ、やっぱり細いんですね、先生の身体って」
言いながら彼はナルトの尻に手を伸ばして上下に撫でる。
ぞわりと悪寒がしてナルトは眉根を寄せた。
「服の上からでも、あなたに触れられるなら俺は嬉しいですよ」
『・・・っ!』
尻から移動したのはナルトの中心部。
そこまでするとは思っていなくて、ナルトは離れようとしたが上手くそれが出来ない。
奈良以外の人間に触れられたくなくて、気持ち悪くて寒気もする。
冷や汗も出てきてナルトは強く瞼を閉じる。
「あれ、あんまり抵抗しないんですね、もしかして先生って案外軽いんですね。」
『調子にのんなよ・・・っ』
声が何時もより低みを帯びて、ナルトはそれでもがまんした。
「奈良先生も案外冷たい人ですよね、恋人なのに他の男に触られる事を許すんですから」
くすくす笑いながらナルトの性器をなぞる黒森。
誰が冷たいって?
ナルトの頭の中は冷静だった。
冷たい?冗談じゃない、あれは自分が楽しめる口実を作ってるだけに過ぎないんだ。
ああ、気持ち悪い。ほんとうに――・・・
『不愉快でしかねえ・・・』
ぱちりと瞼が開き、黒森の腕を取った。
「・・・あれ?」
『お前俺の言葉信じてなかったんだな・・・』
誰だって我慢の限界がある事を。
ぎり、と黒森の手首を握り締めると、苦痛で顔を歪める。
「あの、いたいんですけど・・・」
『痛い?俺はアンタらが止めないから急性ストレス性胃炎になっちまったんだよ、これぐらいでがたがたぬかすんじゃねえっ!』
片手で簡単に黒森を投げ落としたナルトは彼を見下ろす。
『お前如きの人間なんて、片手があれば幾らでも地べた這いずりまわす事ができんだよ』
零眼な眼差しは黒森の背中をぞくりとはしらせ、支配されたように感じて言葉が出ない。
『それとも、今直ぐにでもそこ、握りつぶしてやろうか・・・?』
「・・・っ!」
怖すぎる。この無害に見える人が。
明るいだけが取り柄のような人が。
「も・・・しません」
掠れた声で、精一杯の声を振り絞っても、呟いてるくらいの声音だった。
ドアが勢いよく開いて、ナルトはずんずんと迷うことなく歩いて、立ち止まった。
「――どうした?」
パソコンをしていた奈良は視線を向けず声だけ掛けると、勢いよく抱きつかれる。
それには奈良も驚いて手を止めてナルトを見れば、顔は見えなくても身体が震えている事に気付いた。
「ナルト・・・?」
『・・・さわっていいって、あんた本当に自分が楽しかったら俺が何処触られてもいいのかよっ!』
怒りで声を荒げるナルトの顔は涙が流れ、奈良を睨み上げていた。
『俺がどんだけ気持ち悪かったかあんた分かってんのか!!』
「どこ触られた?」
うっせえ!奈良の肩を手で押しのけて立ち上がると涙を白衣で拭う。
『アンタは嫌じゃなくても、いくら仕事でも俺は、アンタに触る看護師が嫌なんだよ!』
ふざけんな!爆発してしまったナルトは気にもせず机を思い切り蹴って凹みを作った。
「落ち着けナルト、おま・・・っ!」
手を伸ばして触れようとした手を簡単に叩き落としてナルトはそのまま部屋を出た。
嫌に決まってる。
本当は嫌でたまらない。
どんな理由だろうとも、奈良に触れる看護師の姿が。
ただ患者の話をして、肩に触れただけでも嫌で仕方が無い。
奈良をみる熱の籠った視線なんて無くなってしまえばいい。
奈良を想う者なんて、此処から居なくなればいい。
なんて狭い人間なんだろうか。
いくら仕事と分かっていても、我慢をしても、気持ちが自分にあると分かっていても
『・・・っ、てえ・・・っ』
ずきりと痛む腹を押さえて蹲るナルト。
頭が痛くて気持ち悪い。
頭が、ぼうっとする。
『・・な・・・さん・・・・っ』
遠く、なっていく
誰かの声があちこちから聞こえてきて、最後に聞こえたのは、奈良が声を張り上げて呼ぶ
「ナルトッ!!」
その声だけだった。
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