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NARUTO


お腹が膨れると、次に来たのは眠気。

太陽に当たってナルトの白い肌は微かに赤く色付き始めている。

『あー、駄目だ、入ってくる!』

「いきなりどうした?」

眠気覚まし!そう笑顔で返すと、ナルトは岩へ登ってそこから走って飛び込んだ。

「・・・?」

けれどナルトの姿が見えなくて、奈良は立ち上がる。

それでも見えない金色の頭。奈良はまさか、と思って駆け寄った。

「あのバカ・・・っ」

脚でもつったんじゃないのか。

岩に登ってみてもナルトの姿は無くて、奈良は飛び込んだ。

(冗談じゃねぇぞ・・・)

周りを見ても何処にも姿がなくて、奈良の胸は嫌な感じがして鼓動が落ち着かない。

「ナルト!何処にいんだ!?」

呼び掛けても返事がなくて、奈良はもう一度見渡すと、岩の影で水音がする。

『みーつーけー・・・ひっ!』

手に持っていた物がボチャン、と落ちて背中に感じる体温にあどろいた。

『な、なに・・・っ』

「あせった・・・」

心底安心した声で呟く奈良に、本人はクエスチョンマークしか浮かんでいない。

『奈良さん、どうしたの?』

「お前が見えないから心配しただろうが・・・」

ぎゅ、と腹に回っている奈良の腕が強くなって、ナルトは嬉しくて、苦しかった。

『ごめん。岩にヒトデいたから見せようと思って・・・ごめん、奈良さん。』

「お前、それ顔見て言え。」

ごもっともです。

けどこの腕の中から離れたくないな。

物悲しさを感じながら奈良の方へ身体を向けると、抱きしめられた。

『・・・・・・っ!』

肌と肌が密着して、彼にこの忙しない鼓動を知られたくない。

「すげー心臓はやいな」

『いや、驚きで・・・』

苦笑いを浮かべてナルトは離れようとしたが、離してくれなくて困った。

人が少なくても、何処で見られているのかわからない。

『奈良さん、ごめんね。』

だから早く謝って離れなければ。

それなのな離してくれない奈良の身体。似たような体格なのに、自分が細くて包まれてしまっているのが何とも虚しくなる。

「ナルト、お前が選べ」

『・・・なにを?』

いきなり分からない事を言われても、ナルトは理解出来ないが、見上げた奈良の顔は何処か辛そうにも見えた。

「俺の車か、電車か。」

『それってどういう・・・』

ナルトの顔に影ができ、重なった奈良の唇。

突然の事に反応が出来ない。

「先に戻るから、良く考えろ。」

『・・・・・・。』

奈良はそう告げて居なくなると、ナルトの顔は一気に真っ赤になってジワリと瞳が滲んでくる。

『ほんと、ずりー・・・』

なんでそんないきなりなんだよ。

唇に指を当ててナルトは俯いた。







奈良は戻ると膝の間に頭を下げて長い溜息を吐いた。

「――早まっちまったか」

いや、これでも堪えてた方だ。

ナルトがそういう気が無いのは分かっていても、どうしてもそう思ってしまう。

少しずつ変化を見せ始めたナルトに、奈良は気付いていたが、そうとは限らない。

あの日、あの瞬間は今まで感じた事のない気持ちを感じた。

そんなもの奈良は信じていなかったのに、どうしてか本物のように思えてきて。

「――間違いだったんだろ」

一目惚れなんて。


もしナルトが電車を選んでしまったら、家庭教師は断るしかない。そこまで図太い神経なんてないし、ナルトも困るだろう。


ガリガリ、と頭を掻くと空気が冷たいのを感じた。

『・・・奈良さんは、ゲイかバイなの?』

「――は」

顔を上げると目の前にしゃがみ込んで、大きなバスタオルに身をくるんだナルトが居た。

「いや、お前だけだ、そう感じたのは。」

『ねえ、奈良さん・・・』

奈良は手をナルトの口元にあてた。

「今なら分かるか」

『・・・?』

口許を抑えられて首を傾げるナルトに、奈良は言葉を続ける。

「.Never in all my life have I been so strongly attracted to any man」

『・・・嘘くさい。』

バスタオルで顔を隠せるだけ隠すと、奈良は本当だ、と言葉を返す。

【私は生まれて以来、誰にも強く惹かれた事はない。】

以前奈良がヒアリングした時、聞き取れなかった言葉。

奈良から隠れているのをいい事に、ナルトは自分のっ胸に手を当てた。

ドクドクと鼓動する心臓。

身体の中がお湯に浸かったような暖かさと、喜び。

『俺さ、ダメだって言い聞かせてたんだけど。』

「そうか」

『だって家庭教師だし、頭を撫でるのも優しいのもそうだからって。』

でもさ。

ナルトは家庭教師とテストが終わったら海に行くと前田達に告げると、彼らは驚いた顔をしていた。

そんなのただの家庭教師がするのか、と。

けれどナルトは奈良が優しい人だから、と告げれば人に寄るのか、と言われた。

だからナルトも不思議に思っていなくて楽しみにしていた。

きっと、二人の接点なんて消えてしまうから。最後の思い出が欲しかった。

彼と過ごす最後の時間を。

『最後だと思ってたからさ、だから・・・っ』

堪える事が出来なくて涙がポロリと落ちる。

『俺、奈良さんの車で帰りた・・・っ』

自分にだけある感情なら、それは本物なんじゃないのかな。

あんな事言われて、自分の気持ちに嘘なんてつけない。

「後悔しないか?」

『するような事、奈良さんがすんの?』

疑問で返すと奈良は苦笑を零した。

伸びた腕はナルトの頭に向かい、濡れた髪の毛を指に絡めた。

「するわけねえだろ、ばーか。」

『・・・っ、うー・・・っ』

ぽろぽろ涙が出て、奈良は笑う。

「夏休みは、涼しい所で泊まりながら宿題でもするか」

『すっ、る・・・っ』

よしよし、と奈良は母親がするように頭を抱えてナルトの頭を撫でた。


周りからみた人達は、きっと溺れたんだ、クラゲに刺されたんだ、としか感じなくそれでも雰囲気が和んでいた事に、二人は気付かなかった。




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