NARUTO
五
あの日からナルトの表情は少し良くなって、時々笑みを浮かべるようになり、食欲も少し出てきた。
けれど物件探しは未だに続けていて、中々見付からないのが現状だったりする。
「ナルト、あんたここ最近何してるの?」
たまたま居合わせたサクラと出会い、ナルトはどうしたもんかと考える。
素直に言ってしまえば、間違いなく知られてしまう。
『いや、散歩だよ。でないと身体がだるくって。』
「・・・には見えないけど、何かあったの?」
どうして誤魔化されてくれないんだろう。
見抜かれてしまうのもどうかと思うのだが、ナルトは素直に言えず苦笑を浮かべた。
『考え事ぐらいするって。』
「そうよね。でも気を付けなきゃ駄目よ?」
わかったよ。
そう言ってサクラと別れ、ナルトは森の中に入っていった。
少し奥に進むと、ナルトは木の幹を背にしゃがみ込んで、己の肩を抱き締め、瞼を強く閉じる。
『早くしなきゃ・・・』
シカマルを想う気持ちが膨らみ過ぎると入り切らなくなってしまう。
誤魔化しが効かなくなってしまう。
最近は寝付きが悪くて、夜中に起きる事が多くなった。
起きて、シカマルの寝顔を眺めて、触れて。
本当は抜け出したいけど、抱き締める腕をほどいて動けば、彼の事だから起きてしまうだろう。
『・・・どうすりゃいいんだよ』
苦しくて苦しくて、何時も頭の中はシカマルの事が離れなくなって来て。
何をしていても、ふとした時に思い出すのはシカマルの声や姿。
振り解けない。
(その温もりの中に居たくて)
傍から離れたい。
(離れられたくない)
――・・・胸が、苦しい
『・・・っ、くそ・・・っ』
なんで涙なんか出てくんだよ。
それでいいって、なんだよ。
「こんな所で昼寝か?」
『・・・っ!』
どうして何時もタイミングが悪いんだ。
ナルトはシカマルの声を聴いた途端肩が震えた。
近付いてくる音にナルトの胸は嫌な鼓動をして、こないでくれ、と何度も頭の中で唱える。
「・・・ナルト」
『――何でくんだよ』
出た声は掠れて涙声だった。
それを聞いた途端シカマルの表情は変わり、瞳が鋭くなり眉根に寄る皺が深くなる。
「お前・・・」
『なんでもねえから』
ほっといてくれ。言葉にはせず胸の中で呟くと、シカマルはナルトの頭を無理やり上に向かせた。
『いっ・・・て・・・っ!』
「だれだ、誰に泣かされた・・・」
ナルトの視界に映るシカマルは切れ長の瞳をはっきりと尖って色を浮かべていた。
ナルトはそれを見た途端、胃奥からせり上がってくるような不快感を感じて瞳を彷徨わせる。
「言え、ナルト」
こんなシカマルなんて知らない。
ナルトは一度生唾を飲み込んで息をゆっくりと吐き出した。
『・・・考え事してただけだって』
「引っ越しのこと、まだ考えてんのか・・・?」
ナルトの言葉にシカマルが纏う空気は少し和らいだが、まだ重たいものを醸し出していて、ナルトの喉が震える。
『もう、わかんねえ・・・お前、俺に何したいんだよ』
どうして何時もシカマルは自分がいる場所を分かってしまうのか。
どうして毎日自分を抱きしめて眠るのか
「お前の頭ん中、俺で一杯になったか?」
『・・・っ、だから困んだよ!』
ナルトは声を荒げて言い返すと、シカマルは瞳を細めナルトの唇に触れた。
「お前が言ったんだろ、俺の傍は居心地がいいって。」
『そっ、そう、だけど・・・だから困るんだよ!そんなのただシカマルに甘えてるだけだろ!』
漬け込んで、抜け出せれなくなってる自分が嫌だ。
本当は今でもシカマルに抱きつきたくて仕方が無い。
そこまで自分の身体がおかしくなってしまっている。
「いつからお前は素直じゃ無くなったんだ。」
なあ、ナルト。
つう、と下唇を指の腹でゆっくりなぞるシカマル。
たったそれだけでナルトの肩はぴくん、と揺れる。
『・・・や、めろ・・・っ』
頭がおかしくなる。
「誰だよ、夜中に起きて・・・人の顔触ってんのは」
『な・・・起き・・・っ!』
知られていた事にナルトの頬は赤くなり、シカマルの指がそのまま口腔内に入り込んできた。
「そんなんで、お前・・・満足してんのか?」
『・・・っ、やめ・・・んうっ!』
もう一本中に入り込んで、ナルトの口腔内を指で犯し始めるシカマルに、ナルトは息苦しさを感じて瞳が細まる。
指先がナルトの舌先を捕えるとなぞられ、ぐるりと指が回る。
口端からは飲み切れなかった唾液が零れ、シカマルがそれを舐め取った。
『や、ふうっ・・・んんっ!』
苦しいと、シカマルの手首を掴んで降ろそうとするが、顎を引かれて口が開くと、唇が重なった。
『んっ!んんっ・・・は・・・んっ!』
指が抜かれるとシカマルの舌が入り込んで更に奥へと入り込んでくる。
息苦しさでナルトは瞼を閉じて、何かに縋ろうと手を動かせば、シカマルの手に握られ首へと回された。
一分がとても長く感じる程、シカマルの口付けはナルトの思考をおかしくする。
「――次はキスを強請るよう、頭ん中おかしくしてやる」
『・・・っざけ・・・んうっ!』
離れたと思えば直ぐに塞がれて、止まった筈の涙がまたジワリと浮かんでくる。
木に寄りかかっていたナルトの腰を抱き、身体を引き付けるとシカマルは項を指先でなぞった。
『・・・っ、あ!』
びくんと腰が震え、顔を背けてしまうとそれを許さないかのように向き直されて、ナルトは羞恥で更に顔を赤らめた。
『やだ・・・もう、やだ・・・っ』
「じゃあ、素直に言葉で言え。」
射抜くような瞳に見つめられて、ナルトのむねはどくん、と強く胸を打ち付ける。
言えば、気持ちが楽になって離れられるかも知れない。
そんな考えが浮かんできて、ナルトは震える唇を動かした。
『お、れは・・・シカマルが好きなんだ、だからもうこういうのは、困る』
上目で告げると、シカマルは笑みを浮かべてナルトの頬を撫でる。
「あとは?」
『・・・んでそんな・・・』
優しい声で言うんだよ。
我慢出来なくてナルトの瞳から涙が落ちた。
「好きなら、離れる事なんてしなくていいんじゃねえの?」
『いみわかんねえ・・・お前好きな奴いたら誰でもそういうのかよ!』
此処で鈍感スキルを発生するナルトに、シカマルはナルトらしさを感じてくすくす笑う。
それが気に入らなくてナルトは眦が上がる。
「お前ほんと・・・可愛いのな」
『――はあ・・・?』
目を丸くして声が裏返るナルト。
「俺もナルトが好きだから、そう言うんだろ?」
『・・・・・・。』
今度は目を丸くしたまま固まった。
「だから、今日も明日もこの先も・・・お前は俺と一緒に寝起きすんだよ。」
『くそ・・・っ』
なんだよそれ。
何なんだよ、それ。
ナルトは悔しくてシカマルを見上げると、首に回していた腕を引き寄せて口付けた。
「・・・・・・。」
『――好き。』
突然のナルトからの口付けにシカマルは一瞬目を丸くするが、意外性なのは今でも健在な事を実感する。
ぬるま湯に浸かっているような気持ちをさせてくれる温もりが好き。
どこかに行かないよう抱きしめてくれる腕が好き。
なによりも
『シカマル、大好き・・・』
彼自身、たまらなく愛おしい。
唇に触れる熱は暖かく、愛おしい者をみる眼差しが。
『ねえ、ギュッ、てして』
「――いくらでも」
お前が望むのならば。
何度でも、抱きしめて安心させてやる。
これからも、何時までも。
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