NARUTO
四
すやすや眠るナルトを隣で眺めるシカマル。
あの日から寝るようになって、今でも躊躇いながらも何処かで寝たいと言わずにいた。
眠ってしまえばナルトは中々起きない。
だからシカマルはいつも眠るナルトの唇に自分のを重ね、気付かれないよう背中や足の付け根に印を付ける。
独占欲がシカマルをそうさせている事に、彼は苦笑いするしかない。
悪友であり、親友。
そんなナルトにこんな感情を抱いたのは最近ではないような気がする。無意識に、気付かないうちに好いていたのだろう。
安心しきったように眠るナルトの額に唇を落として、シカマルは抱きしめたまま眠りに就いた。
夜中、ナルトは自然と目が開いて、少し目を動かせばシカマルの寝顔。
いつもは結っている髪の毛は降ろされて、ナルトはその毛先に触れる。硬そうに見えてそうでもない。
寝ている時まで整った顔をみて、ナルトの胸はとくりと高鳴り、暖かな気持ちになる。
シカマルの寝顔を眺めて、ナルトはそろりと頬を撫でた。
(だめだ、これ以上触ったりしたら・・・)
もっと触れたくなる。
その唇に自分のを押し付けてしまいたくなる。
悲しそうに眉を寄せて、ナルトは最後にとシカマルの唇を指で撫でて、瞼を閉じた。
この温もりの中に居るようになって、ナルトは昔の記憶を思い出し、この感情が恋い焦がれるものだと気付いてしまった。
シカマルはただ自分を保護しているだけにしかすぎなくて、さっきの事は自分が我が儘を言ってしまったからだろうと。
ただ、黙らせるだけにした事。
だから勘違いしてはいけない。
シカマルは悪友であり、親友で大切な仲間。
奈良家を背負う者。
離れなければ駄目だ。
元に戻らないと、何時までもこのぬるま湯に浸かって抜け出せれなくなってしまう。
こんなシカマルを想う恋愛感情は、邪魔になるだけだ。
『・・・・・・。』
蓋をしなければ。
この感情をこれ以上大きくさせない為にも、きっちりと蓋をしなければ駄目だ。
これ以上の迷惑は、掛けたくない。
******
ナルトは翌朝綱手の所へ顔を出して、どこか物件が空いている所は無いのか一人で探そうとして。
昨夜シカマルがここに居ろと言われたが、ナルトはそれに甘えてしまう訳にはいかないと思って。
どうせなら、自然がある所が良い。
そう思っても中々見つからない物で、人が住まなくなった古い古民家や、朽ちた家もあった。
もし自分が家を作れるのならば、好きな所に作るのに。
ヤマトに相談しても、どうせ直ぐに筒抜けになってしまう。
物件探しを始めて数日が経った頃、ナルトは久しぶりに任務に向かい鈍った体を大いに動かした。
あんな事が無ければ、自分も仲間達も平和だった筈なのに。ナルトは後悔の念を抱きながら、目の前を歩くサスケに声を掛けた。
『・・・なあ、サスケ』
「あー?」
首だけ振り向くと、ナルトは立ち止まり俯いた。サスケも歩くのを止めて向き直すと首を傾げて眺める。
「なんだ、大人しくなって」
『ごめんな、本当はサスケにだってやらなきゃならない事あんのに・・・』
ぽつりと告げた言葉にサスケは盛大な溜息を零す。
「何をいうかと思えば、そんなくだらない事か」
『くだらなくは、ねーんだけど・・・』
下らねえだろうが。サスケの返しにすらナルトは言い返してこない。
以前ならむきになって怒鳴りながら言い返してきたのに。
ナルトなのに、ナルトじゃない。
「お前、何時まで引きずってる気だ。悪いと思うならいつまでも引きずるな。」
『・・・なんで、なくなんねーの?俺、なんかした覚えねえのに・・・』
どうして終わりが見えないんだろう。
ナルトは拳を強く握り締めて、眉根を寄せた。
「ならぶっ飛ばせばいいだろ。前のお前ならしてきた事だ。なにを恐れる、お前を傷つけようとしている者を、お前は受け入れる程お人よしだったか?」
『そうじゃ、ねえんだ・・・身体が動かねえんだよ。』
強張って、呼吸すら上手く出来ない程。
嫌なのに、逃げたいのに何もできない身体が憎い。
『この前だって、腕が伸びて来ただけで動けなかった』
「・・・あれか」
サスケは数日前に聞いた事を思い出すと、頭の中が冷めていくのを感じた。
ナルトがこんなにも弱まっている事に危機感を感じていた。ナルトがもし何かあれば、黙っていないのは腹の中で静かに牙を研いでいるであろう九喇嘛の存在を。
いくらナルトが里の英雄と言われても、裏を返せば里の恐怖にもなる事を分かっているのだろうか。
誰だって我慢の限界を越えれば何をするかなんて分からない。
「お前は負けたままで満足なのか」
『・・・するかよ』
サスケの目の前にいる者は、負けないど根性を持っている。このまま泣き寝入りなんて似合わない。
「渦巻ナルトは、いつからそんな気弱で腑抜けた忍に成り下がった」
『・・・それは、聞き捨てならねえな』
ありがとう。ナルトは笑みを浮かべると、サスケは口端を笑わせた。
負けたままは性に合わない。
好き勝手されるのはもっと腹が立つ。
少しはまともになったか。
サスケはナルトの顔をみてそう感じた。
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