NARUTO
三
いつもなら抱きしめられるだけだったのに、耳を舐められるだなんて思いもよらなかった。
『ちょ、まて・・・シカマ、ル・・・っ!』
ぐいぐい胸元を押してみてもびくともしない。それどころか力が入らない。
「お前、引っ越し考えてんだろ」
『それは・・・いつまでも世話になる訳にはいかないからで・・・っ』
口ごもりながらもシカマルに告げると、ナルトに見えないのを良い事に、彼の表情が一変する。
「また同じ事になったらどうする・・・?」
『でっ、でもずっとシカマルの所にいたら・・・っ』
首を捻って後ろにいるシカマルに告げると、不意打ちで唇を奪われた。いきなりの事に言葉が出なくなる。
『んっ、ふうっ・・・は、あ・・・っ』
慣れた仕草で肩を抱かれ、奪われた唇が熱くなってきて吸い付かれた。
舌を絡めない口付けなのに、充分淫らな匂いのするそれにナルトの身体から力が抜け落ちていく。
『や、やだ・・・んっ!』
抗議するも虚しく、今度は舌を鹹め取られて上あごを舌先でなぞられる。
ぞくりと背筋に何かが奔り、ナルトはシカマルの腕を掴んだ。
『シ、カマ・・・むう・・・っ』
ナルトの舌先を吸い付かれては言葉なんて出ない。
とても長い時間口付けているような錯覚に、ナルトの唇は痺れてきた。
「――邪魔だなんて思う訳ねえだろ」
『・・・っ、そ、な・・・事、言ったって・・・っ』
荒い吐息混りに言葉を返すと、シカマルはそのままナルトの首筋に顔を埋める。
『やめ・・、いっ、てっ・・・』
ちいさな痛みを感じて片目を眇めるナルト。無くなったと思えば、浴衣の合わせ目に手を入れて開かせる。
あの時、確かに嫌だった。
誰かに触れられるのが嫌で、吐き気すらしたのにどうしてそんな気にならないのか、ナルトにはまだ理解出来ていない。
『いっ、やだ、なにすんだよ・・・っ!』
気付けばシカマルはナルトの足の間に入り込んで正面から胸元に顔を近づけて、赤い後を残す。
それが何とも言い難い痛みで、肌蹴たままナルトはシカマルの肩を押す。
「お前が、出ていかねえって言うまで、続けてやろうと思って」
『・・・・・・。』
ナルトを見上げるシカマルの瞳は蜜の色のように煌めいて、それは優雅な獣の瞳のようだった。
『・・・んで、そこまで言うんだよ』
震える喉に力を入れながら尋ねると、シカマルは口端を笑わせるだけ。
こんなシカマル知らない。
強い視線に射抜かれ、身体が思うように動けない。
「いったろ、お前が居ればいい、って」
ああ、まただ。
また胸がとくりとした。
様々な変化を見せる自分の心臓に、ナルトは苛立ってしまう。
ナルトには、この胸の鼓動の意味もシカマルに対する感情も理解している。
理解しているから、ナルトは彼から離れようと考えたのに、それが却下されるだなんて思わなかった。
『・・・んなの、わかんねえ・・・わかんねえよ・・・っ』
拳を強く握って俯くナルト。
――・・・苦しいんだ
消え入りそうな声で告げると、ナルトはシカマルの胸元を軽く叩いた。
『それに俺はいつもシカマルに甘えてばっかだったし、何かあればいっつもシカマルの姿が浮んでくるから頼っちまうし・・・だから俺、離れなきゃダメだって、思ってたのに・・・っ』
「思って、なんだ?」
喉が引きついて言葉が止ってしまうと、シカマルは優しい声で続きを促す。
そうでもしないと、ナルトはため込んだままにして、中々本心を言おうとしない。
『――居心地がいいって、思っちゃうんだよ・・・っ』
ぽたり、と畳に落ちた小さな雫。
ナルトが何時も感じていたものは、シカマルがナルトにくれる優しくて、暖かな温もりだった。
それに浸ると、まるでぬるま湯に浸かっているような錯覚がしてしまう。駄目だと分かっていながらも、それに抗う事が出来なかった。
『そんなの、ダメに決まってんじゃん・・・そんな事思ったらダメに決まって・・・っ』
「――ナルト」
そっと、両頬を包むシカマルの手に言葉が止り、発せられたナルトを呼ぶ何処までも優しい声で止められた。
「いいんだ、それで。それで充分だ。」
そんな事を言われたら、気付いていなくても好きだと言っているのも当然なのだから。
シカマルはナルトと視線を合わせて、今にでも落ちそうな涙を指の腹で拭った。
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